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第30章 個室



さっきのマスターさんが私たちに冷え冷えのおしぼりを渡しに来て、注文どうする? と聞いた。
相馬が勝手知ったる様子でメニュー表を開く。



「霧野、何か飲みたいものある?」



 そんなにぱっと答えられるほど、こういう場に長けていない。
メニューには、知らないカタカナ語がたくさん並んでいた。

 私がフリーズしていることを察したのか、

「俺が選んでいい?」

「選んでくれるの?」

「んー、ちょっと飲んでもらいたいカクテルがあって。お酒でも大丈夫?」



 もともとお酒を飲むつもりだった。
今からどんな話をするかわかっているのに、私だけ素面なんて耐えられない。



 相馬は私に知らない名前のカクテルを頼み、

「俺は、とりあえずビールで」

「はーい。じゃあ、少々お待ちください」



 なんだ、普通にビールとかもあるのか。
だったらお待たせせずに私もそうすればよかった。


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