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unbalance
第30章 個室

メニューを改めてめくってみる。
「さっき相馬が頼んでくれたの、どれ?」
聞くと、相馬は身を乗り出して私と一緒にメニューを覗き込む。
相馬が指差したのは、コスモポリタンというショートカクテルだった。
メニューによれば甘口らしい。
はじめはたくさん並んだカクテルの名前に圧倒されてしまったけれど、よく見ると、メニューにはドリンクの名前だけでなく、何が入っているか、どんな味かまで書いてある。
初心者に優しいお店だ。
じっくり読めば自分でも気になるものを注文できそう。
マスターさんも、聞けば教えてくれそうな雰囲気だったし。
静かなインストのジャズが掛かっている。
「いいお店だね」
「だろ」
相馬が嬉しそうに笑う。それを見て私も嬉しくなる。
「相馬はよく来るの?」
「まあ。週に一回は来るかな」
「私、駅と会社の往復しかしてなかったから。こんなとこあるなんて知らなかった」

