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unbalance
第4章 視線



 よくない願望が勝手に脳内を過ぎていく。このまま霧野を床に押し倒すのは、恐らく容易い。

そのままTシャツを捲り上げたら、霧野は恥ずかしがるだろうか。
抵抗する霧野の手を力づくでどけて、茂みに顔を突っ込めば――

いや、そんなことしなくたって、今この立った状態のまま、彼女の手を掴んで引き上げれば、まるで彼女が自分から裾を捲り上げて、俺に見てほしがっているような――、



「おやおや〜?」

 俺の視線をまるで遮るかのように、霧野のにやにや顔が視界に飛び込んできた。
タオルを雪ん子みたいに被ったまま、口元に手を当てて、俺の顔を覗き込む。

近い。いい匂いがする。くらりとくる匂い。

シャンプーの匂いだけではない。さっき傘の中で、どさくさに紛れて抱き締めた、彼女のうなじから香った匂い。



「相馬クンは、私のこと女として見てないんじゃなかったっけ〜?」


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