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第4章 視線



 咄嗟に切り返しかたも思いつかないぐらい、脳に血液が足りていなかった。
俺は一歩後ずさった。
下半身が完全にテントを張っていた。
慌てて身をかがめるが、くそ、ぜんぜん隠せるレベルではない。
せっかく宥めておいたのに。完全に無駄だった。



 というか、例え俺が本当に万万が一、霧野のことをこれまで一度も女性として意識したことがなかったとしても、してもだよ? 
これは無理だろ、流石に。
こいつは男をなんだと思ってるんだ。襲われても知らねえぞ。



 ……え、待てよ? 
これ……襲ってもいい、ってこと? 
そうなのか? そういうこと、なのか……?



「ま、安心してよ」

 すっと霧野が身を引いた。無垢な笑顔だった。

「私の体なんて、ほとんど男と変わんないって。胸もないし。気にしないで、男友だちが遊びにきたと思ってさ」



「……ばっかじゃねーの」

 心の声が、口をついて出た。


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