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第31章 ラフロイグ



 これまでの人生、ウイスキーを飲んだことはなかった。
いや、ハイボールはウイスキーなんだったっけ? それなら飲んだことあるはずだけど。

相馬のグラスに顔を近づけると、つんとした香りが鼻の奥を刺した。
ひとくち口に含んでみると……強烈なアルコール感が喉を襲って、私は顔を背けてむせた。



 向かいの席で相馬が笑っている。

「きつかったか」

「なん、で、こんなの平気で飲めるの」



 口に手を当てて空咳をしながら相馬を睨む。相馬は、

「うーん、慣れかなあ」

 首を傾けながら、私からグラスを受け取って、口をつけた。



「霧野と間接キスだ」

 わざわざ私を見て、にやりと笑う。
――いちいちそういうこと言わなくていいから。


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