この作品は18歳未満閲覧禁止です

- 小
- 中
- 大
- テキストサイズ
unbalance
第31章 ラフロイグ

これまでの人生、ウイスキーを飲んだことはなかった。
いや、ハイボールはウイスキーなんだったっけ?
それなら飲んだことあるはずだけど。
相馬のグラスに顔を近づけると、つんとした香りが鼻の奥を刺した。
あ、これ、世に言う間接――いやいや、相馬はぜったいそんなの気にしないって。
私も別に、男子混じりでごはん摘んだりとか抵抗ないし。
今だけわざわざ意識することでも。
ひとくち口に含んでみると……強烈なアルコール感が喉を襲って、私は顔を背けてむせた。
向かいの席で相馬が笑っている。
「きつかったか」
「なん、で、こんなの平気で飲めるの」
口に手を当てて空咳をしながら相馬を睨む。相馬は、
「うーん、慣れかなあ」
首を傾けながら、私からグラスを受け取って、口をつけた。
「霧野と間接キスだ」
わざわざ私を見て、にやりと笑う。
――いちいちそういうこと言わなくていいから。

