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unbalance
第31章 ラフロイグ
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相馬のグラスの中で、溶けてウイスキーと混ざっていく氷を眺めながら、カクテルをちびちびと飲む。
触れていないのに、氷がカランと音を立てて転がった。
相馬、お酒強いんだな。
私はあの飄々とした笑顔に、いつか勝てるのだろうか。
カクテルは、少しずつしか減らない。
グラスの半分ほど飲んだところで、相馬がようやく帰ってきた。
ベンチに座るなり、
「ごめん、限界」
「何が?」
「その……振るならさっさと振ってほしいかも」
相馬の顔を思わず見る。
口元は微かに笑っていて、でもそんなんではぜんぜん誤魔化せていない疲れが滲んでいた。
相馬がウイスキーのグラスを取り上げると、また氷が鳴った。
「本気で言ってないでしょ、振られるなんて」
「……どうすかねえ。もう、一回振られてるんでね」
えっ……、
「私、相馬のこと振った?」
「付き合いたいって言ったらはっきり断られましたけど?」
「そ、それは……」
「それでも俺は、未練がましく抗っているわけですが」
相馬は、遅い時間に申し訳ないと言いながら、それでも今夜私と会うことを譲らなかった。
「何なら、返事がノーでも全力で言いくるめにいこうと思っているわけですが」