この作品は18歳未満閲覧禁止です

  • テキストサイズ
unbalance
第32章 記憶



いつの間にか相馬が、私の側のベンチに来て、私の肩を抱き寄せた。

「ごめんな、何度も泣かせて」

 ……ほんとだよ。



 この一週間だけで、私はいったい何度泣いただろう。
泣くなんて、大人になってからは映画を見たときぐらいだったのに。
まるで自分じゃないみたいに、勝手に涙がこぼれてきてコントロールが効かない。
わがまま言いたくないのに。
面倒くさい女になんてなりたくないのに。



「ご、ごめ、なさ、」

「ゆっくりでいいから」



 相馬が私の肩をぽんぽんと叩き、もう片方の手で頭を撫でる。
まるで子どもをあやすみたいに。
不甲斐ないのに、情けないのに、とめたいはずの涙が奥から奥からあふれてきて、反比例するように、徐々に心が凪いでいく。



 だんだんと、私の呼吸の間隔が元に戻ってきたことを察したのだろう。
相馬が私を撫でる手を止めないまま、静かに言った。



「その……ゆっくりでいいから……いつの話か、教えてくれる? 思い出したいから」

 そんなに優しく言わないでよ。



 わかってるのに。私が独りで勝手に被害者意識でいるだけなんて。

 わかっているけれど――もうここまで来たら、話さないという道はなかった。



 グラスを手繰り寄せて、喉の渇きを潤す。

「私が……こっちのチームに移動してきてはじめての飲み会で」



 痛い女だと思うなら思え。
とはいえ、説明しながら、虚しくなってくる。
相馬は黙って聞いていた。


/264ページ
無料で読める大人のケータイ官能小説とは?
無料で読める大人のケータイ官能小説は、ケータイやスマホ・パソコンから無料で気軽に読むことができるネット小説サイトです。
自分で書いた官能小説や体験談を簡単に公開、連載することができます。しおり機能やメッセージ機能など便利な機能も充実!
お気に入りの作品や作者を探して楽しんだり、自分が小説を公開してたくさんの人に読んでもらおう!

ケータイからアクセスしたい人は下のQRコードをスキャンしてね!!

スマートフォン対応!QRコード


公式Twitterあります

当サイトの公式Twitterもあります!
フォローよろしくお願いします。
>コチラから



TOPTOPへ