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unbalance
第34章 ロングアイランドアイスティー

すると、相馬は目を丸くした。
「いや、めちゃめちゃしてただろ。キスしてくれたらー、とか」
「セクハラは含めません!」
含めないのかあー、と項垂れる相馬はまるで本気でがっかりしているようで、……え、まじで?
「……ほんとにあれでアプローチのつもりだったの?」
「わ、悪かったな、どうせ」
どうせ――本命だけには下手ですよ、と、むくれる相馬の声は小さくて、目を泳がせる仕草は何だか思春期の少年みたいで、
あーあ、もう、許したくないのに許してしまいそうになる。
「……あのさ、霧野」
たん、と音を立てて、相馬が突然グラスをコースターに置いた。
「な、何?」
「その……そろそろ、返事が欲しい、んですけど……」
は!?
まだそんなこと言ってんの!?
「わ、わかるでしょ!? 今までの会話で!」
「わかんないね、俺、本命だけには恋愛下手なんで」
相馬はハイボールのグラスを脇に避けて、両手をこちら側に滑らせた。

