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第34章 ロングアイランドアイスティー



 ストップがかけたくて声をあげたのに、自分の口から出たのは甘ったるい声で、

「……お前なあ」

 相馬の声が対照的に低くなり、手にきゅっと力がこもった。


「煽んなって何度言ったらわかんだよ」

「そ、そんなつもりじゃ」

 慌てて咳払いをして声色を調整しながら手を引っ込めた。



 テーブルの中央に、相馬の手だけが取り残された。
相馬は顔を伏せて、手だけこちらに伸ばしているような格好で、空っぽの手をゆっくり握って、そして、ぽつりと言った。



「どうせ襲ったら泣く癖に」

「なっ……泣かないよ!」

 慌てて、声が大きくなる。



「泣いたじゃん」

「泣かなかったじゃん! その、」

 あれは何日前だっけ。

「二回目、の、ときは」

「一回目のときは泣いたって認めてんじゃん」

「あ、あれは……」



 相馬がようやく顔を上げて、私は対照的に顔を背ける。

「お、終わっちゃったなーって思って……。最初で最後だと思ったし……。
 先にこんなことしちゃったら、もう真っ当な関係は見込めないと思ったし……」


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