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第34章 ロングアイランドアイスティー



「それは……私が悪いでしょ」



 相馬が唇をぎゅっと結ぶ。



「ごめんね、いっぱい」

「ほんとに」

 相馬の足が私の爪先を撫でて、離れる。

「いけるかと思って押せば泣いて拒否るし。引けば誘ってくるし。肝心なことは言わないし」

「ご、ごめんな……」

「ごめんじゃなくて」



 相馬が俯いたまま私を睨む。

「謝罪じゃなくて、返事が欲しい」

「へ、返事、」

「できれば、いい返事」



 私はその目を見ていられなくなって、またグラスを見た。
もう氷がほとんど解けたレモンティーを見つめながら、言葉を探す。

「あ、あの」



 相馬は本当に……私でいいんだろうか。

 相馬ほどの人なんだから、もっといい子がいるんじゃないだろうか。
例えば素直で笑顔が可愛くて、人前でもはきはき喋って、いろんな人に好かれていて……。

 そんな子が相馬の隣にいるところを想像して、急に息が苦しくなった。



 一週間前までは、そんなもんだと思っていた。
相馬にはそのうち私じゃない彼女ができるし、私は相馬とはどうもならない。
それでいいと思っていたのに、いつから、どうして、こんなふうになってしまったんだろう。

 相馬に好きって言われたい。可愛いって言われたい。
手に触れてほしい。頬に触れてほしい。足を絡めてほしい。
頭を撫でてほしい。キスしてほしい。

その先も、もっと――


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