この作品は18歳未満閲覧禁止です

- 小
- 中
- 大
- テキストサイズ
unbalance
第34章 ロングアイランドアイスティー

「それは……私が悪いでしょ」
相馬が唇をぎゅっと結ぶ。
「ごめんね、いっぱい」
「ほんとに」
相馬の足が私の爪先を撫でて、離れる。
「いけるかと思って押せば泣いて拒否るし。引けば誘ってくるし。肝心なことは言わないし」
「ご、ごめんな……」
「ごめんじゃなくて」
相馬が俯いたまま私を睨む。
「謝罪じゃなくて、返事が欲しい」
「へ、返事、」
「できれば、いい返事」
私はその目を見ていられなくなって、またグラスを見た。
もう氷がほとんど解けたレモンティーを見つめながら、言葉を探す。
「あ、あの」
相馬は本当に……私でいいんだろうか。
相馬ほどの人なんだから、もっといい子がいるんじゃないだろうか。
例えば素直で笑顔が可愛くて、人前でもはきはき喋って、いろんな人に好かれていて……。
そんな子が相馬の隣にいるところを想像して、急に息が苦しくなった。
一週間前までは、そんなもんだと思っていた。
相馬にはそのうち私じゃない彼女ができるし、私は相馬とはどうもならない。
それでいいと思っていたのに、いつから、どうして、こんなふうになってしまったんだろう。
相馬に好きって言われたい。可愛いって言われたい。
手に触れてほしい。頬に触れてほしい。足を絡めてほしい。
頭を撫でてほしい。キスしてほしい。
その先も、もっと――

