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第35章 コンビニ



 数秒の沈黙があって、霧野が小さく「いいよ」と言った。
俺はすかさず霧野の顔を覗き込んで、唇にキスをした。



「……っ……ちょっ……!」

 霧野が後退ろうとするのを抑えながら、もう一度、二度、



「ちょっと! 相馬!」

 とうとう肩を突き放された。

「ここ! 外だから!」

「いいって言ったじゃん」

「帰ってからって意味に決まってるでしょ!」



 ぽつぽつとしかない街灯に照らされた暗い道で、それでもわかるぐらい霧野は真っ赤になっていた。

「誰も見てないよ。霧野が騒がなければね」

「だからいいってもんじゃ……」



「だめ?」

 俺はしゅんとしてみせて、乞うように霧野に目線を向けた。
確信犯だった。
霧野は戸惑って、だって、とか、でも、とかごにょごにょ言っている。



「……可愛いな、もう」

 嘘偽りのない本心が、無意識に声になって漏れた。
また反抗の声が大きくなりそうな霧野にもう一度キスをして、俺は真正面から抱き締めた。



 霧野が大人しくなる。

 そういう押しに弱いとこ、よくないと思うぜ、ほんと。
まあ、それを利用してここまでこぎつけた俺に言えることじゃないのだけれど。



 ああ、駄目だ――欲求は、落ち着くどころかどんどん膨らんでいく。


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