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unbalance
第35章 コンビニ

「霧野、ごめん」
腕の中の霧野から、何、という返事が返ってきた。
「こっち」
霧野の手を引いて、俺は道を変えた。
街は静まり返っていた。
こっちに小さい有料駐車場があるのを俺は知っていた。
霧野は素直についてくる。俺は駐車場に入って、自販機の影の、ちょうど街灯のささない暗い場所に霧野を連れ込んだ。
「……相馬?」
俺は駐車場と隣の家を隔てるブロック塀に背をもたせた。
正面に、世界でいちばん格好よくて世界でいちばん可愛い女の子が、緊張したようすで、俺と手を繋いで立っている。
それが先週と違って、俺の恋人だというのだから。
何をしても、嫌じゃない、と言うのだから――
無理だよなあ、こんなの、我慢しろなんて。
俺もそこそこ酔ってるかもしれない。
俺はそのまま霧野を引き寄せた。

