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第35章 コンビニ



 そこから俺のアパートまで、誰ともすれ違わなくてほっとした。
手を繋いで帰りながら、霧野は足の力が抜けてしまったようで、二回ほど転びそうになった。
俺は霧野を押し倒したい衝動を抑え、帰宅するなり霧野を風呂に押し込んだ。



 今日は何もしないと言ったのだ。

 何もしないぞ。
これ以上は、何もしないで、疲れた霧野をちゃんと寝かすんだ。



 家に来たらセックスしなければならないと、霧野に思われたくなかった。
セックスしたいだけの男だと思われたくなかったし、しないと泊まってはいけないとも思われたくなかった。
安心して、いつでもおいでと言えるだけの証拠を出したかった。



 今週は生活態度が最悪だったので、部屋が荒れ放題だった。
霧野からチャットが返ってくるまで、ずっとこの部屋でのたうち回っていたのだから、片付けぐらいすればよかったのに。
そんな精神的余裕はなかったのが、もうずいぶんと昔のことみたいだ。
霧野が素直に風呂に入ってくれた今がチャンスと、俺は今日と昨日と一昨日の夕飯のコンビニ弁当をゴミ箱に突っ込み、酒の缶を台所に移し、服を洗濯かごに放り込む。


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