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第36章 歯磨き



「霧野は、歯磨きまだ?」

「ま、まだだけど……」

 すると相馬は首を伸ばして、唇にちゅっとキスをした。

「っあ……っ」

「へへ」



 相馬は再び頭をベッドに下ろしてふにゃりと笑う。

「は、歯磨き、するんでしょ。起きるよ」

「歯磨きしたらまたキスしてくれる?」



 ……よくそんなことが直球で言えるわね。
まだ酔ってるんだろうか。



「歯磨きする」

 相馬がようやくベッドから降りた。



 緩い動きで洗面所に向かう相馬のあとを追う。
相馬が歯ブラシに歯磨き粉だけつけて部屋に戻ったので、私は洗面所でドライヤーを始めた。

 私の髪が乾く前に、相馬は戻ってきた。
うがいをして、んー、と伸びをするのを、私はドライヤーを続けながら眺めていた。



 相馬ががしがしと頭を掻いて、何か言う。
聞こえなくて、私はドライヤーを止めた。

「何?」

「歯磨きしたら目ぇ覚めたわ。風呂入る」



 そのまま相馬がいきなり、無造作にTシャツを脱いだ。



「ちょ、ちょちょちょ!」

 私は慌てて背を向けた。

「別にそっち向かなくていいよ?」



 だから、なんで! 相馬が平気そうなのよ!


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