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第36章 歯磨き



 扉側に相馬がいるので、移動することもできない。
私が固まっているあいだも、衣擦れの音は続く。

「俺の裸なんてもう何度も見たじゃん」

「み、見てない!」

 まともに見られる状況だったことなんて一度もない!



 お風呂のドアが開く音がして、ほっと力を抜いた瞬間、頬にキスの感触があって、

「ちょ……っ!」

「照れちゃって、可愛い」

 もう何度言ったかわからない形容詞を残して、相馬はお風呂に入っていった。



「……ばかぁ」

 私の声は、シャワーの音に掻き消されて恐らく相馬には聞こえていない。



 ……悔しい。

 私ばっかりどきどきさせられて。

 相馬が上がる前に、と私は急いで髪を乾かした。


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