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第36章 歯磨き



「そうだなあ」

 相馬の声が後頭部で響いて、悲しみに突き刺さる。
そんなにはっきり肯定しなくたって、

「霧野はまず、当面のあいだ、残業減らして休日に遊ぶ体力を残す努力をしなきゃかもな」



 そのとおりすぎて何も言えないでいると、急に強い力で頭を撫でられた。

「ま、俺が手伝ってやるから安心しな」

「……ん」



 握っていた相馬の腕を、恥ずかしくなって離す。

「ありがと……」

「素直でいいことだ」



 相馬はそう言いながら、私の首筋にキスをする。
ゆっくりと、私のおなかを撫で回しながら。



 もう少し上のほうまで、撫でてくれても……いいのに。




「お礼に、今度霧野の作った飯が食いたいな」

「相馬は……料理しなさそうだよね」

「しないっすねえ」



 使っている形跡のないキッチンから、そうだろうと思っていた。


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