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第6章 睡魔



残業で弱った心に染みる、こんなタイミングで。

「……ほんと、そういうとこよ」

 嫌いだ。

 嫌う要素が見つからないところが、嫌いだ。



 わかってるよ、相馬はもともと優しい人で、私が勝手に斜めに見てるだけなんだってことぐらい。



「何だよ」

 相馬が眉間に皴を寄せて、しまった、声に出てた、と後から気づく。

思考が回らないながらも、急いで当たり障りのない言葉を探す。



「できる営業マンだよなって思って。飲み会の気配りとかいつも上手いし」

「何それ当てつけ? 不動の成績一位が」

 彼は四缶目のビールを煽りながら言う。



 そうなのだ。
実は私、なぜかここ数年、営業成績で一位をいただいていて、でも、

「それ言われるの好きじゃない」

 テーブルに伏せそうになる重い頭を上げて相馬を睨むと、彼は大人しくなった。

「自分が営業向いてないの知ってるし」



 もともと初対面の人と喋るのは苦手だった。
喋らなくても伝わる完璧な資料を追求しているうちに、取り引き先が私の資料を楽しみに待っているようになっていた。
業界の全体的な動向や予測から、論理的にうちの商品の有効性を導けば、勝手に数字にも繋がっていった。


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