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第6章 睡魔



普段の私だったら、相馬の前で気を許すなんてとんでもない、はずなのに――
どうでもいいや、と思った。
ぜったいに社内では言わないようにしていた本音が、漏れる。



「相馬は、すごいよ。順位とかじゃなくてさ」

「俺は、やりたくない仕事断ってるだけだろ」

「断れるのが、すごいと思う。断っても嫌な顔されない人間関係を、ちゃんと作ってるから。それって相馬の努力じゃない?」



 毎日定時で上がる人だと既に周りに認識されているので、誰も相馬に余分な仕事は持ってこないし、断っても顰蹙を買ったりしない。

結果を出しているのももちろんあるだろうけれど、それ以上に相馬が、みんなに好かれているから。



 上司や先輩に可愛がられて、同期と後輩に慕われて。
忙しそうにしてるとリーダーが心配してくれたり、資料作りが下手なのを見かねて、社内のお局が手直ししてくれたり。



 それって、ぜんぜん偶然なんかじゃない。相馬が、すごいから。



 それは相馬の営業戦略にも表れていて、相馬は資料なんてなくたって、足繁く通って口で説明して契約を取ってくる。
取り引き先の偉い社長に、息子みたいに可愛がられていたりする。
私とはまるで違う。
資料作りが終わらない私を後目に、いつも定時で颯爽と帰っていく。



 ずるい、とは言わない。ただ、羨ましいとは思う。

 これが、生まれ持っての才の違いか、と。



「……それにしても、部長は霧野にばっか仕事持ってきすぎだけどな」


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