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unbalance
第6章 睡魔
「ほんと、あいつはさすがにいい加減にしろよって思う」
相手が相馬ということがすっかり抜けていた。
友だちに愚痴る感覚で思わず口にすると、相馬が吹き出した。
「霧野もそういうこと言うんだ」
しまった。社内の人には誰にも言ってなかったのに、よりにもよって相馬に。
「ちが、今のは……」
「いいんじゃない、別に。俺だし」
相馬だから、だめなんだったのに。
「霧野が完璧超人じゃないってわかって安心したよ」
どうしてそんなに、楽しそうに笑うの。
「……やめてよ」
まあいいかなんて思っちゃうじゃない。
こっちまで楽しくなっちゃうじゃない。
この時間が永遠に続けばいいのになんて、馬鹿こと考えちゃうじゃない。
焦点の合わなくなってきた目で、じっと握った缶を見る。
体が熱い。
私、酔いすぎかも。
わかっているのに、つい口元に運んでしまう。
ぬるくなる前に飲んでしまったほうがおいしいから、なんて言い訳。
三本目のビールももう空になる。
「霧野は、もうちょっと楽になっていいと思うよ」
その優しい微笑みに――ほんと、そういうところよ。
そういう、軽いことすぐ言うところが――嫌いだったのに。