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第1章 残業



「電車、大丈夫? 何線だっけ? 調べようか?」

 確かに、さすがにちょっと……まずいかも?

 いやいや、でも最悪タクシーで帰ればいいし。死ぬこたないでしょ。



「相馬こそ、早く帰ったほうがいいんじゃないの」

「俺がこっから徒歩十分なの知ってるだろ」

 そうだった。
彼は満員電車が嫌だという理由で、ここから徒歩圏内のアパートに住んでいる……らしい。
もちろん行ったことはない。話に聞いているだけだ。



「手伝うよ」

 相馬が椅子に座り直して、私の机から、資料の束をひとつ取り上げた。

「……相馬、資料作りとか嫌いじゃん」

「嫌いだけど。いつも霧野見て、何だこいつ意味わからんって思ってるけど」



 ひとこと多いっつーの。



「霧野が三作るあいだに一でも進めれば、四分の三の時間で済むだろ」

 とんとん、と机を指で小突き、

「で、何すればいい?」

「……じゃあ、この表、こっちのこれと同じイメージで円グラフにしてほしい」

「承知」


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