この作品は18歳未満閲覧禁止です
- 小
- 中
- 大
- テキストサイズ
unbalance
第1章 残業
「電車、大丈夫? 何線だっけ? 調べようか?」
確かに、さすがにちょっと……まずいかも?
いやいや、でも最悪タクシーで帰ればいいし。死ぬこたないでしょ。
「相馬こそ、早く帰ったほうがいいんじゃないの」
「俺がこっから徒歩十分なの知ってるだろ」
そうだった。
彼は満員電車が嫌だという理由で、ここから徒歩圏内のアパートに住んでいる……らしい。
もちろん行ったことはない。話に聞いているだけだ。
「手伝うよ」
相馬が椅子に座り直して、私の机から、資料の束をひとつ取り上げた。
「……相馬、資料作りとか嫌いじゃん」
「嫌いだけど。いつも霧野見て、何だこいつ意味わからんって思ってるけど」
ひとこと多いっつーの。
「霧野が三作るあいだに一でも進めれば、四分の三の時間で済むだろ」
とんとん、と机を指で小突き、
「で、何すればいい?」
「……じゃあ、この表、こっちのこれと同じイメージで円グラフにしてほしい」
「承知」