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unbalance
第9章 同意
「霧野」
俺は力ずくで彼女の腕を外した。
本当はこれは暴力にあたるのかもしれない。
けれど、今の俺にそんなことを省みている余裕はなかった。
彼女の目元は濡れていた。
生理的な涙とか、そんなレベルじゃなかった。
彼女がしゃくりをあげた。
彼女と目が合って、彼女はすぐに俺の手を振りほどいて、また体を捻って腕で顔を隠した。
「……どうして……」
「なんでもない、ごめん、なんでもないから」
彼女は、嗚咽と呼吸の合間になんでもないを繰り返した。
なんでもないようには聞こえなかった。
痛かったか……もしかして――嫌だった?
すうっと体が冷えていった。
さっきまで汗をかいていたのが嘘みたいだった。
俺は、なんてことを。
いや、でも、彼女は入れていいと、確かに。
それとも、嫌々頷かされていただけだったのか?
そんなつもりじゃなかったのに――。
俺はいったい、どこから間違えた?