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第2章 傘立て



「う、うん」

 私も急いでパソコンをシャットダウンして、鞄の整理をする。
外はかなり風雨が増していた。
いつもより気を遣って、濡らしたくないものを内側に、濡れてもいいものを外側にして、鞄の中身を作り直す。

 もうフロアどころか、ビルの中で最後になってしまったようだった。
相馬と一緒に施錠と消灯を確認して一階エントランスまで降りたところで、しかし、事件は起こった。



 社員用の小さなエントランスホールの傘立てには、傘が一本しか残っていなかった。



「……どうして……」

 遠目でも私の傘ではないと思っていたけれど、近づいて確かめる。
この重たそうな黒い傘は、やっぱり私のものではない。



「霧野、傘持ってこなかったの?」

「持ってきたよ! 覚えてるもん、壊れると嫌だから、いつものじゃなくて、うちに余ってたビニ傘を――」

「あー、だからパクられたんだなあ」



 ああそうか、と一瞬泣きそうになるが、ぐっとこらえた。
相馬の前で弱いところを見せたくない。


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