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第11章 奇跡



 嵐の音はいつの間にか止んでいて、昨日の苦労が嘘みたいに綺麗な日差しが、カーテンの隙間から漏れて部屋を薄明るく染めていた。
廊下のほうからトイレを流す音が聞こえた。



 ……相馬、私の名前呼んでたな……。

 誰でも――例え一夜限りの関係でも、相手の名前呼びながらできるタイプなのかな。
それってとっても……善人すぎて、吐き気がする。



 別に、名前呼ばれたぐらいでときめく年齢でもないし。
相馬が私のこと、そういうつもりじゃないこともわかってる。
私は相馬で汚れた指を、スウェットのズボンの中に入れる。
下着の上から、そこにちょっと触れてみる。

昨夜は涙を殺しているうちにいつの間にか寝てしまっていて、相馬がベッド脇にまとめておいてくれた下着は、汚れたまま乾いてしまっていた。


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