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第11章 奇跡



「……霧野……起きてる?」

 咄嗟に寝たふりをする。
あれ、もしかして、バレた……? 
私がじっと動かず無言を貫いていると、相馬が歩く音が聞こえてきた。

声がベッドの方角から、

「服……ここ置くから」

 相馬はそう言って、部屋を出ていった。



 バレてた……かな……。

 バレてたかもしれない。

 うわ、どうしよう。
恥ずかしくて、相馬に合わせる顔がない。

 変態だと思われただろうか。



 昨夜、自分がしてしまったあれやこれやが、今さらながら、急に脳内に蘇ってきた。
相馬になんて思われただろう。
意外と痴女だな、とか? 
割と遊んでるんだな、とか? 
似合わない、とか――



 可愛くもないくせに、ちょっと家にあげただけで勘違いしちゃって、とか。



 自分で勝手に思って、自分で泣きたくなってくる。
穴があったら入りたい。
そのまま生き埋めにされたい。
消えたい。
消滅してしまいたい。
時間が戻るなら戻したい。

やり直させてもらえるのなら、お酒を控えて、大人しく玄関の隅かどこかで小さくなって、タクシーアプリの呼び出しボタンを連打しているのに――だけど、

 もしそうだった場合、あの幸せな夜は経験できなかったのだ。


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