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第12章 回想 不均衡



 黙って相馬から小皿を受け取って、そろそろと腕をおろす。
何にも、誰にもぶつからないように。

相馬の隣の先輩が、相馬に絡んでいる。
取ってあげるなんて優しいじゃんとか何とか。
相馬は笑って、俺は先輩以外なら誰にでも優しいですよと冗談を言う。
先輩が相馬を小突く。

仲良さそう。楽しそう。
いいな。仕事の関係で、どうしてそんなに楽しそうなの? 
アットホームな空気が出来上がっているチーム。
私だけそこに溶け込めていなくて、それは私が新人だからだろうか。
唯一の女だからだろうか。
それとも、彼らと違って、営業としての素養がないからだろうか。
それとも。



 前のチームを出るときの送別会で、女性の先輩が、あそこ男ばっかだから、きっとちやほやされるわねと言っていた。
今のところ、特にちやほやはされていない。女の子らしい言動もできないのだから。

 別にちやほやされたいわけではない。
特別扱いされたいわけでもない。
無理に気を遣われるのもお互いにしんどい。
女だからって変な接待に行かされなくて済んでいるのもありがたいと思っている。

けれど、持てる武器が何もない以上、女だという理由でも構わない。
何か、居ていい理由がないと、何か貢献しないと――



「すみません、ちょっと、お手洗いに」

 相馬がせっかく取り分けてくれたお皿をその場に置いて、私はハンカチだけ持ってそそくさと部屋を出た。


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