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第1章 妻狩り依頼・高慢女の鼻を折れ

　　　どうしてこれを？

と、振り向いた俺の顔を見て話す実華子。


　　　どうして？野島選手のファンだから、

　　　こんな間近でみられることなんてないし、

　　　ゲレンデですよ。

　　　神戸にはベンツがよく走っていますが、

　　　ゲレンデは別格です。

　　　そのコラボレーションですからね。


と、説明すると、写真を撮った理由については理解できた様子の実華子。


　　　これって、奥さんですよね


と、言って笑うと、俺を睨む実華子。


　　　だったら、何だというの


少し怖気づきながら、でも、虚勢を張る感じの物言い。


　　　別にどうもしませんよ。

　　　少なくとも、野島選手、いや元選手は独身だから、

　　　女性と一緒にいることは別におかしくないでしょう？

　　　ただ、あなたは道義的にどうなんですか？

　　　既婚者でしょう？


と、俺は言って笑った。


　　　夫に、この写真を見せるつもり？


と、聞く。その顔が明らか強張っていた。


　　　さあ、それは、あなた次第ですよ


と、だけ伝えて、


　　　作業がありますので、少し離れてもらえますか？


と、俺が言うと、階段の途中辺りで、

ここの会話を聞いていたのか、

哲夫医師が、


　　　実華子。何をしている。作業の邪魔になるだろ


と、実華子を呼んだ。慌てて、廊下を歩いていき、

階段を降りていった。

あとは、実華子がどう出てくるか。

さて、壊れてもいない、調子が悪いわけでもないエアコン。

その前で、適当に時間をつぶして降りようとした俺は、

書斎の机というか座卓の上の書棚の一番上に、

無造作に置かれた数冊の本を見つけた。

本の内容は俺には理解できないような医学の専門書だ。

ハードカバーのケース入り。

その間に、隙間があることに気が付いた。

１センチもない隙間だが、見ると、DVDケース。

出てきたのは、赤いパッケージ。


　　　団鬼六　幻想夫人

　　　濱田のり子

　　　小林ひとみ


というタイトルのDVD。


　　　なるほど。


そういう嗜好が哲夫医師にはあることを知った俺に、

ひとつのプランが浮かんだ。

今までは俺が1人で躾けてきたが、

夫に躾けられる方がいいかもしれない

フッと俺は笑って、すべてを元の場所に戻した。