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幻影の胡蝶 〜桃源郷の寵妃達〜
第7章 西の虎【白虎】…※
「はい…ここが今日私の仕事場です。」

胡蝶が白虎の目を見てハッキリ言った。








『洗い場は、もっと川のふもとだよ。』

そんな無粋な言葉は白虎から出なかった。








チャプっと胡蝶が川に洗濯物を入れる事がする。

白虎はしばらくその音を聞きながら、ゆっくりと目を瞑った。









ジャブジャブ…。

(うう…舞鶴……。)

この沈黙に耐えられないんだけど?!








胡蝶は、背後に感じる白虎を気にしながらも。

自分からはなんて声を掛ければいいか分からない。








舞鶴が、この時間を作ったと言うなら、そう言う事なのだろう。

この時間を作って、白虎に気に入られろと。








しかし、胡蝶は全く男性に対しての手管を知らない。

高校の時になんと無く付き合った彼氏が最後で。

その彼氏ともキス以上はしていない。








何を話しかければ自分に興味を持って貰えるか。

そんな駆け引きなんてした事が無い。










(ああ…もう洗濯物が終わってしまう……。)

どうやら舞鶴が用意した時間さえも、胡蝶は上手く使えない様だ。








(…うう…。今日は顔を覚えて貰えれば十分か…。)

胡蝶は洗濯物を思い切り縛ると、洗った物を入れた籠を持って立ち上がった。








「……俺の寵妃が転生してしまったんだ……。」

(…ん?)

ボソッと聞こえた白虎の言葉に、胡蝶は足を止めた。








多分……いや絶対。

コレは独り言では無くて、自分に言っている。








「………辛い……。」








白虎は顔に腕を当てて、その表情は見えなかった。

だけど、辛いと呟いた彼の声は震えていて。

それがとても悲しそうに聞こえた。
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