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幻影の胡蝶 〜桃源郷の寵妃達〜
第7章 西の虎【白虎】…※
「あんた、働く場所変わるから。」
「……………。」
洗濯物を終えて戻った胡蝶に、舞鶴は言った。
下の者の働く場所すら、舞鶴が決めているのだろうか。
四天王達より、舞鶴の方がよっぽど謎だ。
「今から、厨房に行ってくれる?」
「厨房?」
「あそこが1番、年中人手不足なのよ…。」
ため息を吐きながら言った舞鶴に、胡蝶は不安しかない。
『絶対、ろくな場所じゃない。』
胡蝶の感がそう言っている。
嫌がったところで、拒む事も出来ないと分かっているので、胡蝶は舞鶴に追い出される様に厨房に向かった。
厨房は桃源郷の真ん中。
青龍の屋敷のすぐ側にあった。
「早く!!もうすぐ四神様の昼食の時間よ!!」
厨房の入り口に立つと、外からでも忙しそうなのが分かった。
中を覗くと、バタバタと沢山の女人達が走り回っている。
「今日からこちらで働く事になりました!!」
胡蝶は戦場の様な厨房に、響き渡る声で叫んだ。
一瞬、皆が手を止めて胡蝶を見た。
その中で、1人だけ手を止めずに、料理を作り続けている女人がいた。
服は周りと同じ下の者の服装だ。
しかし、胡蝶が声を掛けると、他の女人はその女人を一斉に見た。
「……あんた…名前は?」
女人は大きな鍋を振るいながら、胡蝶に聞いた。
「………胡蝶です。」
一瞬で厨房の中がざわめきたった。
ここ数日で、胡蝶の名前を聞かなかった日は無い。
「……あんたが胡蝶ね…。」
振り返った女人は、胡蝶がビックリするほど綺麗な人だった。
しかし、ニヤッと笑う女人の顔は、どこか舞鶴を思い出させる様な含んだ笑いだ。