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天狐あやかし秘譚
第78章 怪力乱神(かいりきらんしん)

☆☆☆
黄泉平坂前では、『だいだらぼっち』と化したカダマシが、祓衆の陰陽師やダリと交戦をしていた。千引の大岩の周辺には先回りした祭部の陰陽師達がカダマシの侵入や干渉を防ぐため、七星辰クラスの防御結界の準備を大急ぎで進めているところだった。
本来、七星辰クラスの結界は五公クラスのそれと違い、展開するのにそれなりの時間がかかるのだが、今回は万が一のことを考えてあらかじめ準備をしてあったこと、術者が多く配置されていることなどから、ほんの5分ほどの時間で展開をすることは可能となっていた。
しかし、それでも、その5分という時間、あの巨大な化物の足止めをしなくてはならないのは変わらなかった。
「皆!ダリ殿を援護するのだ!」
祓衆の陰陽師が武器を構える。ある者は弓、あるものは剣、あるものは薙刀のようなものを振るっている。金気、火気、水気、土気、木気の術が『だいだらぼっち』の巨体を撃たんと放たれていった。
「ぐおあおおおお!!」
それでも、カダマシが咆哮を上げ、身震いをすると、術の大部分が消し飛ぶ。かろうじて届いた術もほんの小さな傷をつけるだけに留まっていた。生玉により超強化された肉体は、殆どの術の干渉を無効化するに十分であった。
ーこいつらほとんど、敵じゃねえ!
唯一、敵がいるとしたら
カダマシの視線はダリに注がれていた。大勢の陰陽師の後ろに控え、古槍を構え気を練っている。身体は今の自分のそれよりも遥かに小さいにも関わらず、その身体から迸る妖力によって、ダリの姿は何倍にも大きく見えた。
ーこれが、天狐の本気、なのか!?
思えば東北でも、廃ホテル近くでも、ダリは何らかのハンデを背負っていた。綾音という女を助ける、守る、ということを優先していたことで力をセーブしていたのだ。そのリミッターが外れた今、神にも等しいといわれる天狐の100%の力が自分に向けられている。
ー足が震えている!?
馬鹿な!とカダマシは思い直す。神の力はこの神宝の方だ。これは無限の力!何ものにも負けない『俺の力』だ!
「潰れろ!色男!」
『だいだらぼっち』の状態で振るう、渾身の拳。巨大な拳がダリの頭上に落ちていく。
それは、隕石の落下にも似た、人智ではどうすることもできない力にすら思えた。
「あやなきこと・・・」
拳の向こうで、ダリが嗤ったのを、カダマシは知ることはなかった。
黄泉平坂前では、『だいだらぼっち』と化したカダマシが、祓衆の陰陽師やダリと交戦をしていた。千引の大岩の周辺には先回りした祭部の陰陽師達がカダマシの侵入や干渉を防ぐため、七星辰クラスの防御結界の準備を大急ぎで進めているところだった。
本来、七星辰クラスの結界は五公クラスのそれと違い、展開するのにそれなりの時間がかかるのだが、今回は万が一のことを考えてあらかじめ準備をしてあったこと、術者が多く配置されていることなどから、ほんの5分ほどの時間で展開をすることは可能となっていた。
しかし、それでも、その5分という時間、あの巨大な化物の足止めをしなくてはならないのは変わらなかった。
「皆!ダリ殿を援護するのだ!」
祓衆の陰陽師が武器を構える。ある者は弓、あるものは剣、あるものは薙刀のようなものを振るっている。金気、火気、水気、土気、木気の術が『だいだらぼっち』の巨体を撃たんと放たれていった。
「ぐおあおおおお!!」
それでも、カダマシが咆哮を上げ、身震いをすると、術の大部分が消し飛ぶ。かろうじて届いた術もほんの小さな傷をつけるだけに留まっていた。生玉により超強化された肉体は、殆どの術の干渉を無効化するに十分であった。
ーこいつらほとんど、敵じゃねえ!
唯一、敵がいるとしたら
カダマシの視線はダリに注がれていた。大勢の陰陽師の後ろに控え、古槍を構え気を練っている。身体は今の自分のそれよりも遥かに小さいにも関わらず、その身体から迸る妖力によって、ダリの姿は何倍にも大きく見えた。
ーこれが、天狐の本気、なのか!?
思えば東北でも、廃ホテル近くでも、ダリは何らかのハンデを背負っていた。綾音という女を助ける、守る、ということを優先していたことで力をセーブしていたのだ。そのリミッターが外れた今、神にも等しいといわれる天狐の100%の力が自分に向けられている。
ー足が震えている!?
馬鹿な!とカダマシは思い直す。神の力はこの神宝の方だ。これは無限の力!何ものにも負けない『俺の力』だ!
「潰れろ!色男!」
『だいだらぼっち』の状態で振るう、渾身の拳。巨大な拳がダリの頭上に落ちていく。
それは、隕石の落下にも似た、人智ではどうすることもできない力にすら思えた。
「あやなきこと・・・」
拳の向こうで、ダリが嗤ったのを、カダマシは知ることはなかった。

