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天狐あやかし秘譚
第78章 怪力乱神(かいりきらんしん)

☆☆☆
「ぐおあああああぁっ!!」
背後で大絶叫が響き渡った。次いで、ズシン、というなにか大きなものが倒れ込んだような音がする。
土御門はぺろりと舌で唇を舐めた。
ーダリはん、あの怪物、ぶっ倒しよったな?
カダマシが倒れたことによる地響きが、偶然にもヤギョウの足元を掬った。ふらりとよろけたヤギョウに一瞬の隙ができた。それを、御九里は見逃さなかった。
地面を蹴り、振り上げた鬼丸国綱改(おにまるくにつなあらため)で袈裟懸けに切りつけた。
ザシュ!
鈍い音とともに、ヤギョウの右腕が切り落とされ、持っていた棺もろとも、ぼろりと地面に転がる。
「ナイスやで・・・御九里っ!・・・瀬良!」
瀬良はまるで自分の名が呼ばれるのを最初からわかっていたかのように、流れるような動きでそれに応える。大地に手をついて素早く呪言を奏上した。
「歳破神 傷門を開き 南坐せよ!」
腕を落とされ、たじろいだヤギョウの足元の地面が、瀬良の呪言に応え沸き立つようにうねり出す。瞬時に石の棘が幾本もせり出してきて、その足を大地に縫い付ける。瀬良が使ったのは、土気の簡易捕縛術式だった。
《ぐ・・・っう》
痛みを感じたわけではないだろうが、ヤギョウは身動ぎをする。すぐに彼は自分を呪縛した主を特定し、そこに不可視の力の塊をぶつけた。
「ぐぅ・・・っ!」
目に見えない力に影響され、瀬良は五メートル近く吹き飛ばされる。かろうじて手を前方でクロスさせ、受け身を取ることには成功したが、突然の衝撃に呼吸ができなくなり、たまらず膝をついてしまう。
しかし、土御門はその瀬良を一瞥することもなかった。そのまま手にした五芒星の描かれた符に呪力を流し込んでいく。
「前四 勾陳 土神 家在 辰主戦闘 諍訟凶将」
符は黄色い光を放ち、液体のようになって、ぬるりと地面に落ちた。落ちた雫はわだかまり、巨大な黄金の蛇となって立ち上がっていく。
「勾陳(こうちん)!転ばせや!」
「ぐおあああああぁっ!!」
背後で大絶叫が響き渡った。次いで、ズシン、というなにか大きなものが倒れ込んだような音がする。
土御門はぺろりと舌で唇を舐めた。
ーダリはん、あの怪物、ぶっ倒しよったな?
カダマシが倒れたことによる地響きが、偶然にもヤギョウの足元を掬った。ふらりとよろけたヤギョウに一瞬の隙ができた。それを、御九里は見逃さなかった。
地面を蹴り、振り上げた鬼丸国綱改(おにまるくにつなあらため)で袈裟懸けに切りつけた。
ザシュ!
鈍い音とともに、ヤギョウの右腕が切り落とされ、持っていた棺もろとも、ぼろりと地面に転がる。
「ナイスやで・・・御九里っ!・・・瀬良!」
瀬良はまるで自分の名が呼ばれるのを最初からわかっていたかのように、流れるような動きでそれに応える。大地に手をついて素早く呪言を奏上した。
「歳破神 傷門を開き 南坐せよ!」
腕を落とされ、たじろいだヤギョウの足元の地面が、瀬良の呪言に応え沸き立つようにうねり出す。瞬時に石の棘が幾本もせり出してきて、その足を大地に縫い付ける。瀬良が使ったのは、土気の簡易捕縛術式だった。
《ぐ・・・っう》
痛みを感じたわけではないだろうが、ヤギョウは身動ぎをする。すぐに彼は自分を呪縛した主を特定し、そこに不可視の力の塊をぶつけた。
「ぐぅ・・・っ!」
目に見えない力に影響され、瀬良は五メートル近く吹き飛ばされる。かろうじて手を前方でクロスさせ、受け身を取ることには成功したが、突然の衝撃に呼吸ができなくなり、たまらず膝をついてしまう。
しかし、土御門はその瀬良を一瞥することもなかった。そのまま手にした五芒星の描かれた符に呪力を流し込んでいく。
「前四 勾陳 土神 家在 辰主戦闘 諍訟凶将」
符は黄色い光を放ち、液体のようになって、ぬるりと地面に落ちた。落ちた雫はわだかまり、巨大な黄金の蛇となって立ち上がっていく。
「勾陳(こうちん)!転ばせや!」

