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天狐あやかし秘譚
第80章 絶体絶命(ぜったいぜつめい)

ごくり、と喉を鳴らす。緊張で背中に冷や汗が流れてくる。
でも、私が行かなきゃ・・・
いつも助けてもらってばかりだから、今度は私があなたを助ける番・・・。
ダリ・・・今、行くからね!
「3、2、1・・・お願いします!ニャンコ先生!」
日暮が言うと、足元の猫神が『にゃああっ!』とひときわ高く鳴いた。瞬間、その身体が金色に輝き出し、光が私を包みこんでいく。奇妙な浮遊感と、どこかに吸い込まれていくような感覚で一瞬目が回りそうになる。
「綾音さん!ご武運をぉぉぉぉ!」
日暮の最後の言葉が遠くなっていく。
そして、ふわりと突然足が地面についたかと思うと、私は暗い木立の中、ひとり佇んでいた。少し先で剣戟の音が幾重にも聞こえる。確かに、結界内に入ってきたらしい。
足元にするりと何かの気配を感じ、一瞬『ひぇ!』と声を上げそうになるが、見るとそれは結界の外にいたのとそっくりな黒猫。つまりは日暮の式である猫神であった。
びっくりさせないでよ・・・
ぽんぽんと頭を撫でると、鼻の頭を私の手に近づけてクンクンと匂いをかぎ、くりくりと額をこすりつけてくる。こういう動作を見ると本当にただの猫のように見える。
あ、いけない、いけない。和んでいる場合じゃない。
まずは、ダリを探さないと・・・。
そっと木立の隙間から覗いてみる。少し先に狭くて暗いこじんまりとした神社の境内のような雰囲気の広場があった。結界内にはいくつか陰陽寮の術者達が篝火を立てていたが、戦いの過程でほとんど倒されてしまっていた。真っ暗というわけではないがかなり暗い。それでも、目を凝らすと黄泉平坂を出たあたりで何か黒いものが何体も蠢いており、それを大勢の陰陽師が迎え撃っている様子が見えた。
っ!?
だんだんと目が慣れてくると、それが、洗いざらしたような髪の毛をバサバサと振り乱し、異様に細い手足を持った女性のようだとわかる。先程からうめき声のようなものが聞こえてくるが、これはあの女性『たち』が発しているものだと分かった。
ーあれが、黄泉醜女(よもつしこめ)・・・?
でも、私が行かなきゃ・・・
いつも助けてもらってばかりだから、今度は私があなたを助ける番・・・。
ダリ・・・今、行くからね!
「3、2、1・・・お願いします!ニャンコ先生!」
日暮が言うと、足元の猫神が『にゃああっ!』とひときわ高く鳴いた。瞬間、その身体が金色に輝き出し、光が私を包みこんでいく。奇妙な浮遊感と、どこかに吸い込まれていくような感覚で一瞬目が回りそうになる。
「綾音さん!ご武運をぉぉぉぉ!」
日暮の最後の言葉が遠くなっていく。
そして、ふわりと突然足が地面についたかと思うと、私は暗い木立の中、ひとり佇んでいた。少し先で剣戟の音が幾重にも聞こえる。確かに、結界内に入ってきたらしい。
足元にするりと何かの気配を感じ、一瞬『ひぇ!』と声を上げそうになるが、見るとそれは結界の外にいたのとそっくりな黒猫。つまりは日暮の式である猫神であった。
びっくりさせないでよ・・・
ぽんぽんと頭を撫でると、鼻の頭を私の手に近づけてクンクンと匂いをかぎ、くりくりと額をこすりつけてくる。こういう動作を見ると本当にただの猫のように見える。
あ、いけない、いけない。和んでいる場合じゃない。
まずは、ダリを探さないと・・・。
そっと木立の隙間から覗いてみる。少し先に狭くて暗いこじんまりとした神社の境内のような雰囲気の広場があった。結界内にはいくつか陰陽寮の術者達が篝火を立てていたが、戦いの過程でほとんど倒されてしまっていた。真っ暗というわけではないがかなり暗い。それでも、目を凝らすと黄泉平坂を出たあたりで何か黒いものが何体も蠢いており、それを大勢の陰陽師が迎え撃っている様子が見えた。
っ!?
だんだんと目が慣れてくると、それが、洗いざらしたような髪の毛をバサバサと振り乱し、異様に細い手足を持った女性のようだとわかる。先程からうめき声のようなものが聞こえてくるが、これはあの女性『たち』が発しているものだと分かった。
ーあれが、黄泉醜女(よもつしこめ)・・・?

