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天狐あやかし秘譚
第80章 絶体絶命(ぜったいぜつめい)

『結界内に溢れている黄泉の瘴気は妖怪変化の類を著しく強化する力があります。そのため、クチナワが呼び出した妖魅たちや、首無しの死霊の力は倍増どころか5倍くらいに強大になっています。こちらともくれぐれも交戦しないように!』
そう釘を差されていた。私自身も若干先程から息苦しさを感じている。もしかしたら服の下に縫い付けてある瘴気除けの札がなければ、命に関わるのかもしれない。
ダリはどこ?
目を凝らしてみる。
右・・・いない。
正面・・・いない。
左・・・あれ・・・?
大柄な男が倒れているらしい。その側にもう一つの影が動いているように見えた。
倒れているのはカダマシ、そばにいるのはダリ・・・ではないだろうか。
一体何をしているの?
とにかく、動いているらしいことに安心をした。早く傍に行ってあげたい。
がさりと、ヤブをかき分けて出ていこうとした時、正面の戦況が大きく変わった。
「うわああ!!」
「なんだ!」
前方がとたんに騒がしくなる。見ると、ジャングルジムくらいの大きな何かがうそうそと蠢いているのが見えた。しかも、一匹ではなく、4〜5匹はいる。よく見るとそれは何本もの長い脚を振り回し陰陽師たちを蹴散らしており、時折口からなにか糸のようなものを吐いている。
「気をつけろ!牛鬼(うしおに)だ!」
牛鬼・・・。確かにそう言われれば、私の目にもその姿は頭部が牛、身体が蜘蛛の奇妙な生き物だと認識できた。明らかにこの世の生き物ではない、妖怪だ。恐らくクチナワが新たに呼び出したのだろう。
牛鬼達は長い腕をブンブン振り回し、陰陽師たちを牽制していた。どうやら腕の先は剣のような鋭い鉤爪になっているようで、迂闊に近寄れないようだった。かと言って距離を取ると、牛の口から大量の糸を吐いて絡め取ろうとしてくる。近づくことも遠ざかることもしにくい、厄介な敵のようだ。
その牛鬼たちの間を縫って、大男がひとりこちらにかけてくるのが見えた。男は小脇に棺桶のようなものを抱えている。頭の部分には頭巾のようなものを被っており、身体は戦国武将が身につけているような甲冑に覆われていた。
あれが首無し死霊・・・!
ということは、あの棺桶の中に片霧麻衣ちゃんが!?
そう釘を差されていた。私自身も若干先程から息苦しさを感じている。もしかしたら服の下に縫い付けてある瘴気除けの札がなければ、命に関わるのかもしれない。
ダリはどこ?
目を凝らしてみる。
右・・・いない。
正面・・・いない。
左・・・あれ・・・?
大柄な男が倒れているらしい。その側にもう一つの影が動いているように見えた。
倒れているのはカダマシ、そばにいるのはダリ・・・ではないだろうか。
一体何をしているの?
とにかく、動いているらしいことに安心をした。早く傍に行ってあげたい。
がさりと、ヤブをかき分けて出ていこうとした時、正面の戦況が大きく変わった。
「うわああ!!」
「なんだ!」
前方がとたんに騒がしくなる。見ると、ジャングルジムくらいの大きな何かがうそうそと蠢いているのが見えた。しかも、一匹ではなく、4〜5匹はいる。よく見るとそれは何本もの長い脚を振り回し陰陽師たちを蹴散らしており、時折口からなにか糸のようなものを吐いている。
「気をつけろ!牛鬼(うしおに)だ!」
牛鬼・・・。確かにそう言われれば、私の目にもその姿は頭部が牛、身体が蜘蛛の奇妙な生き物だと認識できた。明らかにこの世の生き物ではない、妖怪だ。恐らくクチナワが新たに呼び出したのだろう。
牛鬼達は長い腕をブンブン振り回し、陰陽師たちを牽制していた。どうやら腕の先は剣のような鋭い鉤爪になっているようで、迂闊に近寄れないようだった。かと言って距離を取ると、牛の口から大量の糸を吐いて絡め取ろうとしてくる。近づくことも遠ざかることもしにくい、厄介な敵のようだ。
その牛鬼たちの間を縫って、大男がひとりこちらにかけてくるのが見えた。男は小脇に棺桶のようなものを抱えている。頭の部分には頭巾のようなものを被っており、身体は戦国武将が身につけているような甲冑に覆われていた。
あれが首無し死霊・・・!
ということは、あの棺桶の中に片霧麻衣ちゃんが!?

