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天狐あやかし秘譚
第81章 覆水不返(ふくすいふへん)
ーあかん・・・瀬良は昨日、天乙貴人を宿したばかりや・・・。2日連続では負担が大きすぎる。

土御門は一刀のもとに鬼熊の胴を薙ぎ払う。真っ二つになった巨大なヒグマの妖怪は夜の闇に消えていった。

上空を見ると、奇妙な笑い声を上げながらクチナワが両手を振りかざし次々に妖(あやかし)を召喚し続けていた。

「きっひゃひゃひゃひゃっ!オラオラオラ!死ね、死ね!死ねえぇ!!」

牛鬼や馬骨の繰り出す攻撃のスキを見て、強化された小玉鼠が炸裂し、雷獣の吐き出す雷が飛び交う。体制を崩そうものなら、すぐさま鎌鼬の鋭い刃が首元を狙ってくる。

「大技出す暇もねえ!」
御九里が叫びながら、鬼丸国綱改(おにまるくにつなあらため)を振り抜く。その一刀で数匹の妖魅が霧散するが、この状況ではそれも焼け石に水、といった感じだった。
「このままじゃジリ貧じゃあ!」
水の刃を水天鏡から繰り出し続ける左前も徐々に後ずさっていく。陰陽寮の精鋭たちは多数の妖魅に取り囲まれ、次第に広場のある一点に追いやられていった。
「このままじゃ、まずいのです!」
土門が雷の矢を放ちながら言う。その額には汗がじっとりと滲んでいた。
「土御門様!」
瀬良がもう一度言う。皆までは言っていないが、その口調は、土御門に早く天乙貴人を使うよう促しているのは明確だった。

ーこの状況で最適な天将は何だ?
 青龍の空中戦で鵺を叩き落とすか?
 いやダメや・・・青龍の雷撃の射出速度じゃ鵺にあっさり避けられてまう・・・
 では、勾陳で地上の鬼獣を叩くか?
 あかん、牛鬼にせよ馬骨にせよ、若干、大地から浮き上がっとる。あれじゃ、大地に接触しているものにダメージを与える勾陳の力を十分に活かせん
 天后によるチームの結界保護・・・いや、守りに入ったら追い詰められる・・・
 そうなると、やっぱり・・・

土御門はちらりと瀬良を見た。天乙貴人の憑坐にはどんな術者でもなれるわけではない。どうあっても瀬良に無理をさせることになる。

ー今の瀬良の精神・肉体の回復具合からみて、天乙貴人を呼び出せるのは5分、いや、3分が限界か・・・それで、あいつは片付けられたとして、黄泉平坂に入り込んだあの首無しはどうする!?

瀬良の肉体への負担も心配だったが、切り札である天乙貴人のカードを切ってしまうことのリスクも頭をよぎり、どうにも決心できない。
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