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天狐あやかし秘譚
第81章 覆水不返(ふくすいふへん)

『君は、死んだ人でも蘇らせることができる、特別な人間なんだよ』
って。
ぎゅっと私は手の中の勾玉を握りしめた。勾玉はオレンジ色に薄く輝き、その表面を黒色の紋様がうねうねとしている不思議なものだった。
『いいかい』
絶望の中過ごしていた『なのはな園』から、ある日私はカダマシとクチナワと名乗る男性に連れ出された。その後、お父さんやお母さんに会うための準備だと言われ、山の中のお寺のようなところで4日間ほど過ごしていたのだけれど、その時に一回だけ『緋紅』と名乗る男性が来たことがあった。その緋紅が私に言ったのだ。
『君はこれから黄泉平坂というところに行くんだ。
そこは死んだ人が行く場所なんだよ。
そこで、特別な玉を握って祈るんだ。
わかるかい?君がお父さん、お母さんに会いたいと願う。
強く願わなきゃダメだよ。』
だから、私は今、この手に死返玉と呼ばれる宝の玉を持って、必死に祈った。
そうしたら、たしかに目の前の壁が薄くなって、その向こうにお父さんやお母さんが見えてきた。
顔はよく見えないけれども、立ち方とかでわかる。間違いなく、あれは会いたかった人の姿だった。
『玉を握ってお祈りしていると、苦しくなるかもしれないけど負けちゃダメだよ』
そう、だから頑張った。ここに来るときも、身体が辛くてだるくて、大変だったけれども、私がインフルエンザになったからみんな死んじゃったんだ。だからこれくらい我慢しなくちゃって思って頑張った。
『そして、ここからが大事だよ。よく聞くんだ。
壁の向こうには、囚われたお姫様がいるんだ。
そのお姫様が全部の死んだ人を蘇らせる素晴らしい力を持っているんだ
だから、そのお姫様を探すんだよ』
お姫様・・・どこ?
お父さん、お母さんを、みんなを助けてくれる、お姫様・・・
私は必死に探した。
壁は薄くなったとは言え、向こう側はとても暗い。よく見通すことができない。
どこ?・・・どこにいるの?
緋紅は、すぐに分かるよって、言っていたけれど・・・。
手前にはいない。右側にもいない。左側にもいない。
奥の方・・・?もっと・・・奥?
目を凝らす。たくさんの人の影が動いている。
その奥・・・奥・・・
って。
ぎゅっと私は手の中の勾玉を握りしめた。勾玉はオレンジ色に薄く輝き、その表面を黒色の紋様がうねうねとしている不思議なものだった。
『いいかい』
絶望の中過ごしていた『なのはな園』から、ある日私はカダマシとクチナワと名乗る男性に連れ出された。その後、お父さんやお母さんに会うための準備だと言われ、山の中のお寺のようなところで4日間ほど過ごしていたのだけれど、その時に一回だけ『緋紅』と名乗る男性が来たことがあった。その緋紅が私に言ったのだ。
『君はこれから黄泉平坂というところに行くんだ。
そこは死んだ人が行く場所なんだよ。
そこで、特別な玉を握って祈るんだ。
わかるかい?君がお父さん、お母さんに会いたいと願う。
強く願わなきゃダメだよ。』
だから、私は今、この手に死返玉と呼ばれる宝の玉を持って、必死に祈った。
そうしたら、たしかに目の前の壁が薄くなって、その向こうにお父さんやお母さんが見えてきた。
顔はよく見えないけれども、立ち方とかでわかる。間違いなく、あれは会いたかった人の姿だった。
『玉を握ってお祈りしていると、苦しくなるかもしれないけど負けちゃダメだよ』
そう、だから頑張った。ここに来るときも、身体が辛くてだるくて、大変だったけれども、私がインフルエンザになったからみんな死んじゃったんだ。だからこれくらい我慢しなくちゃって思って頑張った。
『そして、ここからが大事だよ。よく聞くんだ。
壁の向こうには、囚われたお姫様がいるんだ。
そのお姫様が全部の死んだ人を蘇らせる素晴らしい力を持っているんだ
だから、そのお姫様を探すんだよ』
お姫様・・・どこ?
お父さん、お母さんを、みんなを助けてくれる、お姫様・・・
私は必死に探した。
壁は薄くなったとは言え、向こう側はとても暗い。よく見通すことができない。
どこ?・・・どこにいるの?
緋紅は、すぐに分かるよって、言っていたけれど・・・。
手前にはいない。右側にもいない。左側にもいない。
奥の方・・・?もっと・・・奥?
目を凝らす。たくさんの人の影が動いている。
その奥・・・奥・・・

