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天狐あやかし秘譚
第82章 悲壮淋漓(ひそうりんり)

☆☆☆
一方、地上では、クチナワによって生み出された鬼獣は、彼の気絶によって消滅したものの、黄泉平坂から湧き出続ける黒く腐りかけた肉体を持つ鬼女である黄泉醜女(よもつしこめ)に苦戦していた。
「状況は!?」
土御門と瀬良、左前が駆けつける。結界術などを駆使して黄泉醜女が溢れ出すのを防ごうとしていた祭部衆の陰陽師のひとりが、土御門に請われるがまま、現状の報告をする。
「大音響とともに千引の大岩が破壊され、そこから大量の悪鬼が湧き出して参りました。半径20メートルほどの結界で押さえつけてはいたものの、隙を突かれ、例の首無しの死霊の侵入を許しています。」
その後は、必死に溢れる黄泉醜女達を押さえつけ続けていたようだった。
「これじゃあ、ヤギョウとやらを追いかけることもできひんな・・・」
祭部の結界で押さえつけ、祓衆の陰陽師が祓い続けてはいるが、祓えている数よりも湧き出してくる数の方が多い。溢れかえらせないようにするのに精一杯という様子だった。
左前が討伐に加わり、結界内の黄泉醜女の数は大分減ったものの、それでもこの状況では黄泉平坂の入口にたどり着くのは至難の業と言わざるを得ない。
「ただ、先程、天狐ダリが坂内に入ったのも確認されております。」
「なんやと?天狐はんが?」
ー天狐が自発的にヤギョウを追いかけた?
・・・ありえへん、とまでは言わないが・・・なにか、嫌な予感がする
「とにかく、奴らは死返玉とその適合者を携えている可能性が高い。黄泉平坂の奥でええことするわけはないんや。はよ追いかけるで!」
自分も将軍剣を引き抜いて戦闘態勢を取りながら土御門は言う。その横で瀬良もまた符を構えていた。
「一気に祓うで!瀬良ちゃん!」
土御門が将軍剣を顔の前に斜めに構える。これは、いわゆる霞の構えというもので、土御門の得手とする構えのひとつだった。
その構えのまま気を練り上げ、呪言を奏上し始めた。
「天地開闢 四神天帝を奉る 霊光、星辰、日形、月形、極みて退けよ」
将軍剣に光が宿り、それが切っ先に収束していく。
土御門の放つ大技のひとつ、『四神霊光檄』だった。
「東方青帝土公、南方赤帝土公、西方白帝土公、北方黒帝土公、赤門より再拝せよ」
切っ先が震え、人の耳には捉えがたいほどの超高周波の音響を放つ。
一方、地上では、クチナワによって生み出された鬼獣は、彼の気絶によって消滅したものの、黄泉平坂から湧き出続ける黒く腐りかけた肉体を持つ鬼女である黄泉醜女(よもつしこめ)に苦戦していた。
「状況は!?」
土御門と瀬良、左前が駆けつける。結界術などを駆使して黄泉醜女が溢れ出すのを防ごうとしていた祭部衆の陰陽師のひとりが、土御門に請われるがまま、現状の報告をする。
「大音響とともに千引の大岩が破壊され、そこから大量の悪鬼が湧き出して参りました。半径20メートルほどの結界で押さえつけてはいたものの、隙を突かれ、例の首無しの死霊の侵入を許しています。」
その後は、必死に溢れる黄泉醜女達を押さえつけ続けていたようだった。
「これじゃあ、ヤギョウとやらを追いかけることもできひんな・・・」
祭部の結界で押さえつけ、祓衆の陰陽師が祓い続けてはいるが、祓えている数よりも湧き出してくる数の方が多い。溢れかえらせないようにするのに精一杯という様子だった。
左前が討伐に加わり、結界内の黄泉醜女の数は大分減ったものの、それでもこの状況では黄泉平坂の入口にたどり着くのは至難の業と言わざるを得ない。
「ただ、先程、天狐ダリが坂内に入ったのも確認されております。」
「なんやと?天狐はんが?」
ー天狐が自発的にヤギョウを追いかけた?
・・・ありえへん、とまでは言わないが・・・なにか、嫌な予感がする
「とにかく、奴らは死返玉とその適合者を携えている可能性が高い。黄泉平坂の奥でええことするわけはないんや。はよ追いかけるで!」
自分も将軍剣を引き抜いて戦闘態勢を取りながら土御門は言う。その横で瀬良もまた符を構えていた。
「一気に祓うで!瀬良ちゃん!」
土御門が将軍剣を顔の前に斜めに構える。これは、いわゆる霞の構えというもので、土御門の得手とする構えのひとつだった。
その構えのまま気を練り上げ、呪言を奏上し始めた。
「天地開闢 四神天帝を奉る 霊光、星辰、日形、月形、極みて退けよ」
将軍剣に光が宿り、それが切っ先に収束していく。
土御門の放つ大技のひとつ、『四神霊光檄』だった。
「東方青帝土公、南方赤帝土公、西方白帝土公、北方黒帝土公、赤門より再拝せよ」
切っ先が震え、人の耳には捉えがたいほどの超高周波の音響を放つ。

