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天狐あやかし秘譚
第82章 悲壮淋漓(ひそうりんり)

後、ワンワードで呪言が完成するというその時、突如、黄泉平坂の入口から爆発的な光が溢れ出した。一瞬あたりが昼間のように明るくなり、土御門だけではなく、そこにいるすべての者の目が眩んだ。
音は、なかった。一瞬の静寂が訪れ、そして不意に光は消えた。
土御門の術は中断を余儀なくされる。眩んだ目を眇め、視力の回復を急ぐ。
ようやく視界が開けた時、土御門は驚愕した。
「なんや!」
先程までそこに溢れていた鬼女達は姿を消し、ついでに漂っていた黄泉の瘴気まで霧散していた。
「一体何が・・・!?」
横で瀬良も目を丸くする。あれほどの数の妖魅を一瞬で消し去り、しかも空間の清浄も果たしている・・・。
「こんなことできるんは、あいつしかおらん。
天狐や。天狐はんが黄泉路で暴れとるんや」
これは好機だ、そう、土御門は判断した。
「左前と九条、それから祓衆10名、祭部10名、ついて来い。
わいの予想が正しければ、こりゃ・・・」
土御門は言葉を切る。それ以上言うのは憚られたからだ。
彼が瀬良を伴って黄泉平坂の入口に突入すると、その後に20数名の陰陽師たちが続く。
「土御門様の予想が正しければ?」
傍らを走る瀬良が尋ねた。土御門がそちらをチラと見る。
「ああ・・・予想が正しければな・・・わいら、神様と同じことせなあかんのよ・・・」
はぐらかしたような回答に瀬良の顔に疑問符が浮かぶ。
「ダリはんが急いどるんは、黄泉路が完全に開いたから、や。
だとすると、黄泉の岩戸をもう一度閉めて、千引の大岩据えて・・・って
神話の時代以来の・・・大仕事やで!」
そこまで聞いて初めて、瀬良に驚愕の表情が浮かんだ。
「頼りにしてるで?
瀬良ちゃん・・・!」
正面を見据えて冗談めかしてはいるものの、土御門の額には、冷や汗が浮かんでいた。
音は、なかった。一瞬の静寂が訪れ、そして不意に光は消えた。
土御門の術は中断を余儀なくされる。眩んだ目を眇め、視力の回復を急ぐ。
ようやく視界が開けた時、土御門は驚愕した。
「なんや!」
先程までそこに溢れていた鬼女達は姿を消し、ついでに漂っていた黄泉の瘴気まで霧散していた。
「一体何が・・・!?」
横で瀬良も目を丸くする。あれほどの数の妖魅を一瞬で消し去り、しかも空間の清浄も果たしている・・・。
「こんなことできるんは、あいつしかおらん。
天狐や。天狐はんが黄泉路で暴れとるんや」
これは好機だ、そう、土御門は判断した。
「左前と九条、それから祓衆10名、祭部10名、ついて来い。
わいの予想が正しければ、こりゃ・・・」
土御門は言葉を切る。それ以上言うのは憚られたからだ。
彼が瀬良を伴って黄泉平坂の入口に突入すると、その後に20数名の陰陽師たちが続く。
「土御門様の予想が正しければ?」
傍らを走る瀬良が尋ねた。土御門がそちらをチラと見る。
「ああ・・・予想が正しければな・・・わいら、神様と同じことせなあかんのよ・・・」
はぐらかしたような回答に瀬良の顔に疑問符が浮かぶ。
「ダリはんが急いどるんは、黄泉路が完全に開いたから、や。
だとすると、黄泉の岩戸をもう一度閉めて、千引の大岩据えて・・・って
神話の時代以来の・・・大仕事やで!」
そこまで聞いて初めて、瀬良に驚愕の表情が浮かんだ。
「頼りにしてるで?
瀬良ちゃん・・・!」
正面を見据えて冗談めかしてはいるものの、土御門の額には、冷や汗が浮かんでいた。

