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天狐あやかし秘譚
第83章 一業所感(いちごうしょかん)

♡ーーーーー♡
【一業所感】人間が同じ業を身にもっている報いとして、同じ果を感じること。
歴史は繰り返す・・・?でも、そうとは限らないよ!みたいな。
♡ーーーーー♡
イザナミは、先程起こったこと、そして、今、目の前で起きていることを信じることができなかった。
ー今、何が起きた?
突如、自身の身体から光が溢れた。恐らくその光が原因となり、動くはずのない『骸』が動いたのだ。そして、あろうことか、文字通り死ぬほどの痛みの中、『骸』となった女が、自分が追い詰めつつあったあやかしの男を守ったのだ。
ー光・・・あれはなんだ?
胸に手を当てる。思い当たることとしては、自身を黄泉から引き離すために呑み込んだ神宝の効力だ。あれは死返玉。本来は死者の国である黄泉の神が持つべき宝。その力は生と死の境を越えることを可能とするだけではなく、黄泉の国の王である証でもあった。
ーその死返玉が生み出した光が身体から漏れた?
それならば『骸』が動いた理由も説明がつく。黄泉返りの力が部分的に働いた、ということだろう。ただ問題はそこだけではない。その力が漏れだしたのも、道理が立たない。
ー漏れたのか?ひとりでに?
いや、それも違う。ひとりでに、であろうはずがない。
イザナミは、もうひとつ己の身体に取り込んだものを思い出した。
それは、依代とした少女だ。
取り込まれた瞬間にその意識も何もかも奪った気でいたが、どうやら何かの拍子に泡沫(うたかた)のように浮かび上がったらしい。
ー今はどうだ?
そう思い、彼女は自身の身を注意深く眺めてみた。身体に特に異変は感じない。その体内には確かに、イザナミが現世に顕現するために必要とした『依代』である少女の肉体を感じるが、それが彼女自身の思いに反して何事かをなそうとするような動きは感じなかった。
ーでは、先程のことは、単なる気まぐれにすぎなかったのだろうか?
まあいい、今度こそ、そのようなことがないように、注意深く押さえつければよいだけのことだ。
だが・・・
イザナミは今一つの信じがたい光景に目を向ける。
黄泉の王であり、上位神であるはずの自身と、あやかしの男の間に立ちはだかる人の子。なんとか掲げている両の手は震え、足もくず折れそうになっている。腐りかけた頬肉は歯を食いしばることすら許していないだろうに・・・
【一業所感】人間が同じ業を身にもっている報いとして、同じ果を感じること。
歴史は繰り返す・・・?でも、そうとは限らないよ!みたいな。
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イザナミは、先程起こったこと、そして、今、目の前で起きていることを信じることができなかった。
ー今、何が起きた?
突如、自身の身体から光が溢れた。恐らくその光が原因となり、動くはずのない『骸』が動いたのだ。そして、あろうことか、文字通り死ぬほどの痛みの中、『骸』となった女が、自分が追い詰めつつあったあやかしの男を守ったのだ。
ー光・・・あれはなんだ?
胸に手を当てる。思い当たることとしては、自身を黄泉から引き離すために呑み込んだ神宝の効力だ。あれは死返玉。本来は死者の国である黄泉の神が持つべき宝。その力は生と死の境を越えることを可能とするだけではなく、黄泉の国の王である証でもあった。
ーその死返玉が生み出した光が身体から漏れた?
それならば『骸』が動いた理由も説明がつく。黄泉返りの力が部分的に働いた、ということだろう。ただ問題はそこだけではない。その力が漏れだしたのも、道理が立たない。
ー漏れたのか?ひとりでに?
いや、それも違う。ひとりでに、であろうはずがない。
イザナミは、もうひとつ己の身体に取り込んだものを思い出した。
それは、依代とした少女だ。
取り込まれた瞬間にその意識も何もかも奪った気でいたが、どうやら何かの拍子に泡沫(うたかた)のように浮かび上がったらしい。
ー今はどうだ?
そう思い、彼女は自身の身を注意深く眺めてみた。身体に特に異変は感じない。その体内には確かに、イザナミが現世に顕現するために必要とした『依代』である少女の肉体を感じるが、それが彼女自身の思いに反して何事かをなそうとするような動きは感じなかった。
ーでは、先程のことは、単なる気まぐれにすぎなかったのだろうか?
まあいい、今度こそ、そのようなことがないように、注意深く押さえつければよいだけのことだ。
だが・・・
イザナミは今一つの信じがたい光景に目を向ける。
黄泉の王であり、上位神であるはずの自身と、あやかしの男の間に立ちはだかる人の子。なんとか掲げている両の手は震え、足もくず折れそうになっている。腐りかけた頬肉は歯を食いしばることすら許していないだろうに・・・

