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天狐あやかし秘譚
第83章 一業所感(いちごうしょかん)

「ダリはん!」
土御門と、瀬良、そして、陰陽寮の陰陽師たちが現れた。本来、死返玉がなければ多数の黄泉醜女によって、その通行を阻害される黄泉平坂がダリによって浄化されたことにより、彼らはほぼ障壁なくここまで来ることができたのだ。
「綾音さん!?」
瀬良と九条が綾音の変わり果てた姿に呆然とする。
「土御門さん・・・岩戸が開いとる」
左前が黄泉平坂の先を見て、呟いた。
「ダリはん、一体何があったんや?」
広間の奥で結界に包まれ、寝かされている麻衣と、ダリの前に力なく横たわる綾音を見て、土御門が問うた。
「イザナミが、綾音を殺めたのだ・・・。そして、死してなお綾音は・・・」
そこで、ダリの言葉は途絶えた。
しん、と一同が静まり返る。何が起こったのか、おおよそのことを皆が察したのだ。
その時、ハッと何かに気づいたように九条が麻衣を見た。そして、そこに駆け寄る。
「ダリさん!・・・なんとか、なるかもしれませんよ!」
その声にダリが顔を上げる。
「なんや?九条、なんとかって、どういうことや!?」
見てください!と、九条がハンカチを使って直接触らないように取り上げたのは、麻衣の胸元にあった神宝・死返玉だった。オレンジ色に黒い紋様が蠢いている勾玉の形をしたそれは、九条の手の中で不思議な光を放っていた。
「魂呼びができるかもしれません」
土御門が目を瞠る。当然だ。魂呼びとは、死者蘇生術のことだ。歴史上、成功したという実例は、当の土御門の祖先である『安倍晴明』の記録があるのみである。
「不可能だ」
土御門が言おうとしたことを左前が代弁した。別に彼が特別に非情なわけでは無い。ただ、道理として語っただけだった。
「死者を蘇らせるなんぞ・・・どれだけの呪力量と、繊細なコントロールが必要だと思っとる!いくら神宝があろうとも、無理だ。一歩間違えれば、また黄泉が溢れかえるぞ!」
「普通は不可能です。でも、この場の力、そして、ここにいる人たちの力があれば・・・そう、理論上は可能です!」
九条は力を込めて言った。一瞬、左前と九条との間の空気がピンと張り詰めた。
「・・・聞かせてみい、九条、勝算、あるんやろな?」
沈黙を破るかのように、土御門が口を開いた。
土御門と、瀬良、そして、陰陽寮の陰陽師たちが現れた。本来、死返玉がなければ多数の黄泉醜女によって、その通行を阻害される黄泉平坂がダリによって浄化されたことにより、彼らはほぼ障壁なくここまで来ることができたのだ。
「綾音さん!?」
瀬良と九条が綾音の変わり果てた姿に呆然とする。
「土御門さん・・・岩戸が開いとる」
左前が黄泉平坂の先を見て、呟いた。
「ダリはん、一体何があったんや?」
広間の奥で結界に包まれ、寝かされている麻衣と、ダリの前に力なく横たわる綾音を見て、土御門が問うた。
「イザナミが、綾音を殺めたのだ・・・。そして、死してなお綾音は・・・」
そこで、ダリの言葉は途絶えた。
しん、と一同が静まり返る。何が起こったのか、おおよそのことを皆が察したのだ。
その時、ハッと何かに気づいたように九条が麻衣を見た。そして、そこに駆け寄る。
「ダリさん!・・・なんとか、なるかもしれませんよ!」
その声にダリが顔を上げる。
「なんや?九条、なんとかって、どういうことや!?」
見てください!と、九条がハンカチを使って直接触らないように取り上げたのは、麻衣の胸元にあった神宝・死返玉だった。オレンジ色に黒い紋様が蠢いている勾玉の形をしたそれは、九条の手の中で不思議な光を放っていた。
「魂呼びができるかもしれません」
土御門が目を瞠る。当然だ。魂呼びとは、死者蘇生術のことだ。歴史上、成功したという実例は、当の土御門の祖先である『安倍晴明』の記録があるのみである。
「不可能だ」
土御門が言おうとしたことを左前が代弁した。別に彼が特別に非情なわけでは無い。ただ、道理として語っただけだった。
「死者を蘇らせるなんぞ・・・どれだけの呪力量と、繊細なコントロールが必要だと思っとる!いくら神宝があろうとも、無理だ。一歩間違えれば、また黄泉が溢れかえるぞ!」
「普通は不可能です。でも、この場の力、そして、ここにいる人たちの力があれば・・・そう、理論上は可能です!」
九条は力を込めて言った。一瞬、左前と九条との間の空気がピンと張り詰めた。
「・・・聞かせてみい、九条、勝算、あるんやろな?」
沈黙を破るかのように、土御門が口を開いた。

