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天狐あやかし秘譚
第83章 一業所感(いちごうしょかん)

☆☆☆
「片霧麻衣は、神宝の適合者です。恐らく十分な呪的支援があれば、力を正確に死返玉に伝えることができるはずです。呪的支援は、ここにいる祭部が担当します。結界を多重に張り、麻衣への呪力の流れを可能な限り緻密にコントロールします。
そして、呪力の源は、ダリさんを中心にお願いします。祓衆たちもそこに呪力を乗せてください。そして、幸いにして、ここは黄泉の入口です。しかも綾音さんは死んでから時間が経っていない。ダリさんとこれだけの人数の陰陽師が力を絞れば、十分に黄泉から綾音さんの生命を呼び戻せる可能性はあります」
九条が綾音を蘇らせる算段を淡々と説明していく。
「じゃが、肝心の儀礼はどうする?魂呼びの儀は現代まで正確に伝わっとらんぞ」
左前が疑義を呈した。
「それは、僕が担当します。・・・以前、研究したことがあるんです。その時は、足りない要素が多すぎて諦めました。でも、場所、呪力、そして儀式に使う神宝、今は、そのすべてが揃っています・・・」
「ふ・・・む・・・」
左前が視線を落とし考え込むような表情を浮かべる。
「最後に、土御門様」
九条が、土御門の方に向き直る。
「天乙貴人を、使ってください」
え!?一同が息を呑んだ。九条の言う意味をうまく飲み込めなかったからだった。天乙貴人は天将であり、戦闘などに使うのが主だ。今の状況でそれをどう使うというのか?そんな疑問をそこにいる全員が感じていた。
ひとり、土御門だけが得心した様子だった。
「制御か?」
九条が頷いた。
天乙貴人は範囲内の呪的現象を完全にコントロールすことができる。それは、とりも直さず、不完全な呪法であっても、それを完全に働く形で作用させることができるということを意味していた。
「ここにいる全員が必要なんです・・・これなら・・・いや、これしかないです!」
そこまで聞いて、ダリが、顔を上げた。
立ち上がり、そして、ゆっくりと、頭を下げた。
「頼む」
その瞬間、作戦の決行が決まった。
「片霧麻衣は、神宝の適合者です。恐らく十分な呪的支援があれば、力を正確に死返玉に伝えることができるはずです。呪的支援は、ここにいる祭部が担当します。結界を多重に張り、麻衣への呪力の流れを可能な限り緻密にコントロールします。
そして、呪力の源は、ダリさんを中心にお願いします。祓衆たちもそこに呪力を乗せてください。そして、幸いにして、ここは黄泉の入口です。しかも綾音さんは死んでから時間が経っていない。ダリさんとこれだけの人数の陰陽師が力を絞れば、十分に黄泉から綾音さんの生命を呼び戻せる可能性はあります」
九条が綾音を蘇らせる算段を淡々と説明していく。
「じゃが、肝心の儀礼はどうする?魂呼びの儀は現代まで正確に伝わっとらんぞ」
左前が疑義を呈した。
「それは、僕が担当します。・・・以前、研究したことがあるんです。その時は、足りない要素が多すぎて諦めました。でも、場所、呪力、そして儀式に使う神宝、今は、そのすべてが揃っています・・・」
「ふ・・・む・・・」
左前が視線を落とし考え込むような表情を浮かべる。
「最後に、土御門様」
九条が、土御門の方に向き直る。
「天乙貴人を、使ってください」
え!?一同が息を呑んだ。九条の言う意味をうまく飲み込めなかったからだった。天乙貴人は天将であり、戦闘などに使うのが主だ。今の状況でそれをどう使うというのか?そんな疑問をそこにいる全員が感じていた。
ひとり、土御門だけが得心した様子だった。
「制御か?」
九条が頷いた。
天乙貴人は範囲内の呪的現象を完全にコントロールすことができる。それは、とりも直さず、不完全な呪法であっても、それを完全に働く形で作用させることができるということを意味していた。
「ここにいる全員が必要なんです・・・これなら・・・いや、これしかないです!」
そこまで聞いて、ダリが、顔を上げた。
立ち上がり、そして、ゆっくりと、頭を下げた。
「頼む」
その瞬間、作戦の決行が決まった。

