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天狐あやかし秘譚
第83章 一業所感(いちごうしょかん)
☆☆☆
すぐに、綾音を蘇生させる儀式の準備が始まった。

祭部衆が黄泉からの予期せぬ干渉が無いよう結界を張る。
祓衆と左前がダリを取り囲み、呪力を高めていく。
ダリがその中央で皆から集まる力をまとめ上げ、片霧麻衣の胸元にある死返玉に注ぎ込んでいく。

「始めますよ・・・」

片霧麻衣と綾音の骸を並べて置き、麻衣の傍らで九条が正座をする。
一拝、そして、もう一拝。
深く、深く頭を垂れる。
その口から、朗々とした言葉が溢れだした。
それは、『布留の言(ふるのこと)』と呼ばれる、太古の呪言だった。

「そろえて
 ならべり
 いつわり
 さらに
 くに
 ちらさず
 いわい
 おさめて
 こころ
 しずめて・・・」

ふるへ・・・ふるへ・・・ゆらゆらと・・・ふるへ・・・

その言葉に合わせて麻衣の胸元の死返玉がゆっくり、ゆっくりと左右に揺れ始める。
ダリの額に玉のような汗が光り、そこから注がれる呪力が更に強くなっていった。

光が溢れ、麻衣の身体を包みこんでいく。

土御門が瀬良に目配せをする。瀬良がひとつ、頷いた。

「天一貴人 上神 家在 丑主福徳之神 吉将 大无成」

土御門の呪言に応え、瀬良の身体が青く光り輝く。髪の毛が白銀に変わり、まるで美しい精霊のような姿に変貌していく。

「天乙貴人・・・綾音を・・・呼び戻してくれ!」

天乙貴人と化した瀬良が両の手を広げる。ふわりと身体が浮き上がり、周囲が更に明るく照らし出されていった。

「そろえて
 ならべり
 いつわり
 さらに
 くに
 ちらさず
 いわい
 おさめて
 こころ
 しずめて
 ふるへ・・・ふるへ・・・」

九条は必死に祈っていた。手応えはあった。死返玉が綾音の生命を見出し、それを引き寄せようとしているのを知覚できた。

しかし、黄泉の主が綾音の生命や魂を引き込もうとする力は、九条の予想を超え、強いものだった。歯を食いしばり、呪言を唱え続ける。

ーもっと・・・もっと力を!

ダリが天魔反戈を顕現させ、その石突を大地に突き刺し、更に力を絞る。神の武具を媒介に、さらなる力が死返玉に流れ込んでいった。

ーあと・・・少し!

ジリジリと綾音の生命は引き寄せられつつあった。
それでも、あと・・・あと一歩足りない。

「ふるへ、ふるへ・・・ゆらゆらと・・・ふるへ・・・」
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