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天狐あやかし秘譚
第83章 一業所感(いちごうしょかん)
☆☆☆
【黄泉平坂が閉じられてから数時間後 緋紅の屋敷にて】

どっかりと、鎧に身を固めた大男が、座敷の真ん中にあぐらをかいて座る。

《ごもご、ぐ》

その男には首から上がすっぽりとなかった。いつもは頭巾を被っているが、今日はそれすらつけていない。
その姿を見て、部屋の左右にいる二人の巫女は明らかな嫌悪の表情を浮かべる。

首がないこと、に対する嫌悪感というのもそうだが、二人が冷や汗すらかいているのは、ヤギョウというこの化物につい先だって犯された尽くした記憶が鮮明なことによる。ややもすると恐怖のあまり叫びだしそうになるのを、二人は必死に堪えていた。

相変わらずヤギョウの言葉はどこから発せられているかわからないし、音としては意味不明だ。だが、不思議と意味はわかるのである。

『約束の品だ』

そう言っていた。
懐から無造作に取り出したのは、小さな古い鏡だった。素材は何で出来てるかわからない。黒ずんでおり、直径は15センチほどに見える。部屋にいる二人の巫女、スクセとキヌギヌが持つ古代の鏡よりも二回りほど小さいものだった。

鏡を見て一瞬、緋紅は満足げな表情を見せるが、すぐに唇を歪めた。

「なるほど・・・確かに約束の品だね。
 でも・・・カダマシとクチナワは見捨ててきたってわけかい?」

《ぐう、が、む》
『盟約は【神代鏡】のみだ』

はっ!

ヤギョウを前にした緋紅が鼻で笑う。
「一宿一飯の恩義も忘れたのかい?
 君の身体を掘り起こしたのは僕だよ?
 女も与えた、住まいも、鎧も・・・何が不満なんだい?」

《がぐう・・・》
『十分恩義は返した・・・』

ぽい、と古ぼけた鏡を緋紅の足元に投げる。首無し大男のヤギョウは、そのまま立ち上がり、踵を返した。
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