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天狐あやかし秘譚
第86章 能鷹隠爪(のうよういんそう)
☆☆☆
「猫神が来ました!おそらく主のところに案内しようとしています!」

九条がスマホで状況報告をする。報告をしながら、御九里といっしょに夜の倉庫街を疾走していた。

「猫神の向かっている方向から、おそらくターゲットは倉庫街からすでに出て、東京港に移動している。そっちでは追えてないのか?」
九条の言葉に電話口に出た土門が答えた。
「今、判明したのです。人質、全員、東京港の船舶に乗せられているのです。出港スケジュールから考えると、猶予は30分ほど、なのです!」

電話口から絶望的な情報が伝わってくる。九条はスマホを耳から離し、御九里に向かって「おい!」と声を掛ける。しかし、しかし、御九里はそちらを一瞥することすらなく、ただ一言、
「聞こえた!急ぐぞ!」
と言うと、ぐん、とスピードを上げた。彼の傍らに走る猫神もまた、しなやかに身体をしならせて速度を上げていった。

「このまま猫神を先頭に東京港に向かいます!万が一のことを考えて、海上保安庁の方にも手回しを!」

ー後もう少し・・・

九条はスマホを通話のままに走り続けた。これだけの距離を全力に近い速度で走りながらふたりとも息を乱さないのは日頃の訓練の賜物と言えよう。

「とりあえず、船見つけて、殴り込み・・・ってか?」

御九里もまたひたすらに前を見つめて走り続ける。次の角を右に曲がれば東京港というところまでやっと二人は辿り着いた。

ーよし・・・まだ時間はある!

九条は残り時間を頭の中で計算し、少し安堵した。だが、それも束の間のことだった。

「な!?」

先に角を曲がった御九里が絶句した。次いで、同じ光景を見た、九条も立ち尽くす。

「どうしたのです!?」
様子が変わったことを感知したのか、電話口から土門の声が漏れた。九条がゆっくりと、スマホを耳に押し当て、目の前の光景を説明した。

「駄目です・・・土門様・・・船舶が・・・船舶が・・・
 数十隻、あります」

二人の目の前、倉庫街が途切れた先の港には、これからの出港を待つ、外国籍の船が、沖合までの海、見渡す限りに停泊していたのである。

頼みの綱の猫神も、じっと止まったまま動かなかった。

「日暮さんたちがいる船を・・・特定できません・・・」

九条の言葉に絶望の色が交じる。
日暮達が海外に向けて出発してしまうまで、あと25分を切っていた。
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