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天狐あやかし秘譚
第11章 【第4話 女怪】福善禍淫(ふくぜんかいん)
「ぱぱがね!びゅーんて飛んでいって、さっと助けたの!」
「ダリ殿が空中で、こう!ばばっと捕まえたでござる、さすがでござる!」
どうやら、女性は飛び降りた瞬間をダリによって助けられたということだ。マジか!?
なんだか、マンガのようだ。

「とにかく、公園に連れていきましょう。それからどうするかを考えよう」
ずっと、ここでこうして抱えているわけにもいかない。容態が悪いなら救急車を呼ぶ必要があるだろう。

「いいや、まだだ・・・」
ダリが呟く。そして、胸にいだいた女性を私に預けると、欄干から眼下を見下ろす。
「追ってくる」

え?何が?

尋ねようとしたが、それは叶わなかった。ぶわっと欄干の向こうから大量の何かが立ち上ってきたのだ。

「返せ・・・かーえーせー!!」
「かえせ、カエセ、カエセ、かえせ・・・」
「かああえぇせぇえ」

それは、幾百の人のような何かだった。まるでぬめった泥のような人形の影が、欄干の下から逆巻く水のように立ち上がってきていた。その影たちは、あるものは顔が崩れ、あるものは口も裂けている。そのせいか、明瞭な発音ができるもののほうが少ないようだ。ただ、どの影にも共通している点がある。目だけがギラギラ光っていること。

そして、おそらく全員が・・・女性だ。

「きゃあ!!!」
「な!何事じゃあ!これは!!」
「ままー!!」

私はとっさに清香ちゃんと芝三郎を抱え込むようにする。何あれ!?妖怪?おばけ?幽霊?悪霊?!

「女怪だ」

ダリが言うのが聞こえた。直後、ふわりと身体が浮き上がる感覚。そして、疾風の速さで私達は、元いた公園に連れ戻された。

どうやら先程の『女怪』とやらはここまでは追ってこないらしい。ほっと息をつく。
とりあえず安心していいのだろうか。

「怪我はないか?」
こういうとき、まっさきにダリは私の心配をしてくれる。そのことに気づいてから、心配されるたびに嬉しいと思ってしまう。今の状況だと不謹慎かもしれないが・・・。

「うん、大丈夫。えっと・・・清香ちゃんと、芝三郎は?」
「大丈夫!」
「拙者も大過ないぞ」

抱えていた女性をそっとレジャーシートに寝かせる。この人も女怪に襲われたのだろうか?そういえば・・・?
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