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天狐あやかし秘譚
第98章 大信不約(たいしんふやく)
ここにきて、私の脳内になんとも言えない『嫌な予感』が過った。ダリは私との・・・その・・・『エッチ』で妖力を補っている。同じ妖狐の一族である佐那のソレも同じ方法だとしたら・・・。

「まさか、あんた・・・まぐわいとか言うんじゃないわよね?」
「え・・・あ、はい!よくご存知ですね。わたくしは朱音殿の夫である陽翔(はると)様と・・・」
「ちょ・・・ちょっと待ったー!!!」

私は慌てて口を挟んだ。お・・・お父さんと・・・このちんちくりんの佐那が・・・ま・・まぐわ・・・っ!!

もうその光景は想像を絶していた。頭の中で勝手に「映倫18歳未満観覧禁止」の文字が踊り、モザイクがかかりまくった映像が流れていく。

お父さんが・・・お父さんがっ!

私が目を白黒させていると、佐那がきょとんとした表情を浮かべ、首を傾げた。

「陽翔様と朱音殿とのまぐわいを身近に感じることで『力』を得ていた・・・のでございますが・・・なにかいけないことでございましたでしょうか?」

え・・・!?
見てた・・・だけ?

はあーっ・・・・

それを聞いて一気に脱力する。もちろん、親の夜の営みのシーンも同じくらい思い浮かべるのは難しいものであるが、佐那と父のそれよりは遥かにマシである。まあ、ふたりの『営み』を佐那が見ているのが『いい』とは決して言えないが・・・

「えっと・・・うん、続けて・・・」
「はい。ということで、私は陽翔様と朱音殿から力をいただきつつご家族をお守りしていたわけですが、綾音様も御存知の通り、陽翔様は・・・」

そう・・・私の父、浦原陽翔は、私が大学4年時に病気で急死してしまったのだ。あのとき私は丁度卒論と就職活動の真っ盛りであり、父の訃報を受けて急遽、九州と東京を何往復もする羽目になって大変な思いをした。

母は、私が忙しいことを汲んでくれて、悲しそうな顔を見せまいとしていたけれども、あの時、十分に支えてあげられなかったのは、やっぱり今でも少し心残りではあるのだ。

そうだよな・・・お母さんとお父さん、仲良かったもんな・・・

え?でも・・・ということは?
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