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天狐あやかし秘譚
第100章 死中求活(しちゅうきゅうかつ)
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【死中求活】絶体絶命の窮地の中で生き延びるための活路を求めること。
最後まで、あきらめるもんか!みたいな。
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私達が代々木公園に差し掛かったときにはすでに日が暮れかけていた。渋谷区にありながらも、このあたりの道は暗くなると車は通るが人通りは少なくなる。

「東京にもこんなふうなところがあるんだね。」
「うん・・・昼間とかはイベントやったりもして賑やかなんだけどね。」

時折、夜の日課だろうか、ジョギングをしている人にすれ違ったり、犬の散歩をしている御婦人とすれ違ったりはするものの、やはり渋谷の駅近くに比べたら人は遥かに少ない。怪我の功名といえばそれまでだが、母にとってはこっちの道のほうが歩きやすかったかもしれないななどと思う。

「あら?」

不意に母が公園の方を見た。

「綾音、今、何か聞こえなかった?」
「何かって?」
「うん・・・何か・・・悲鳴みたいな?」

え?

母に言われた慌てて耳を澄ませてみる。しかし、私の耳が捉えていたのは、すぐ側の道を走っている車のエンジン音くらいなものだった。

「あ!やっぱり!」

言うと、母は突然、公園の中めがけて走り始めた。

「お母さん!」

私の耳には聞こえなかった。若い私より母のほうが耳が良いなどということが、ありうるのだろうか?

そんな事を考えているうちに、母はズンズンと公園内に入っていってしまうので、私も慌ててそれを追いかけた。

『綾音様!お・・・お待ち下さい!』

お腹の中で佐那が慌てた様子で何かを私に伝えようとしていたが、私としてはそれどころではなかった。土地勘のない母を、しかもこんな暗い道で見失ったら大変、その一心だった。

「お母さん!待って!」

私も公園に飛び込んでいく。

後ほど私はこの行為を、いたく悔いることになる。何故、このときに少しでも佐那の声に耳を傾けなかったのか・・・と。
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