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天狐あやかし秘譚
第18章 【第5話 木霊】隋珠和璧(ずいしゅかへき)
季節が巡る。
すぐに彼は立派な青年になった。

ある時から、彼の元気がなくなった。花がしおれるように、蝶が強い風に翻弄されるように、弱々しくなったように見えた。

それとともに、家の中の雰囲気も変わった。
両親が笑わなくなった。彼の兄弟が涙を流していた。喧嘩をしたわけでもないのに・・・。なぜかわからず、私はとても戸惑った。

そして、とうとう、ある時、見たことのない服を着た彼は私にこう言った。

「行かなければならなくなりました。・・・でも、必ず戻ってきます」

彼が私をぎゅっと抱きしめた。
生まれて初めて感じた、人の子の温かさだった。

季節が巡った。夏が来て、秋が過ぎた。冬の日が終わり、春が訪れる。
彼は、帰ってこなかった。

また、巡る。次の夏、その次の夏、そして、また次の夏。
彼は帰ってこない。

幾年経ったことだろう。
家の人はいつの間にかいなくなり、家に笑い声はなくなった。

私は待ち続けた。
だって、彼は「必ず戻る」と言ったから。

この家は、彼が戻ってくるところ。
私に会いに・・・来てくれるところ。

私にとって、かけがえのないもの。絶対に守らなければならないところ。
だから・・・だから・・・。
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