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天狐あやかし秘譚
第18章 【第5話 木霊】隋珠和璧(ずいしゅかへき)
☆☆☆
「綾音!・・・綾音!」

肩を揺すられている。誰?誰かが呼んでいる。

「綾音・・・大丈夫か?」
ああ・・・この声。よかった、彼が戻ってきた・・・。
「綾音!」
この声・・・ダリ?

薄っすらと目を開けると、私はダリに抱きかかえられ、もとの部屋にいた。清香ちゃんと芝三郎、ダリが私のことを心配そうに見ていた。

「あ・・・れ?私・・・?」
「まま、ぱぱといっしょに急に出てきた」
「異界からダリが綾音殿をお姫様抱っこして連れて出てきたでござる」

え?お姫様抱っこって・・・。

「異界でお主が急に倒れ、それとともにあの女の怪異も消えた」
そうなんだ・・・あれ?今、私が見ていた夢って・・・。
ダリの声を聞いて、何十年ぶりに愛しい人が帰ってきたって、すっごく嬉しいと感じた。

あの気持ちって・・・?
それに、最後のあの男性の姿・・・。

「どうした・・・綾音?」
「まま、どっか痛いの?」

私の目からは涙が溢れていた。頬を伝い、顎から落ちた。

さっき見た夢・・・もしかしたら、あの女性の怪異の記憶?

『行かなければならなくなりました』

そう言った男性が来ていた服。見慣れないと『私』が感じた服は・・・

そう、それは、第二次世界大戦末期の日本。
死ぬとわかっていても、それでも戦地で国のために戦うことを求められた若者たちが着ていた服。

死の象徴のような・・・

「あれって、特攻服だった・・・」

また一粒、私の目から涙が落ちていった。
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