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天狐あやかし秘譚
第25章 毛骨悚然(もうこつしょうぜん)

☆☆☆
「なるほど・・・そうですか・・・。だとすると、あの女の言ったことが非常に意味を持ってきますね」
宝生前が自身を襲った女から聞き出した話を教えてくれた。
『本家なんて・・・見たことない!!!みんな圭介様が命令するし、この島の人はみんな浮内の家に世話になってて、逆らえないんです・・・』
薫という女が言ったことだ。
「本家は『存在しない』のかもしれないですね。ここにはホシガリ様だけがいる・・・それなら、綾音さんたちが今しがた見てきた家の様子にも合点がいきます。この家がこれほど複雑に入り組んでいるのは・・・、ホシガリ様を閉じ込め続けるため、かもしれません」
「え?じゃあ・・・草介さんは?」
私はにわかに不安になってきた。この家に人間は一人もおらず、ただ、ホシガリ様という正体不明の神のみがいるとしたら・・・
「早くしないと・・・婿入りの儀というのは、とりも直さず生贄の儀そのものかもしれません」
ひえええ!
私の頭の中には、謎の神、ホシガリ様に頭からバリバリ食べられそうになっている草介さんの図が浮かび、背筋がゾッとしてしまった。
☆☆☆
結局、話した末、この入口を強行突破するのが一番だろうと結論し、ダリに鍵を壊してもらい、私達は中に入り込んだ。
外見からして奇妙なこの家は内もまた、極めて奇妙であった。
裏戸を入り、三和土を上がると、すぐに目の前にふすまがあった。それを開くと、目の前に右上に登る階段が横切っており、左右には廊下が伸びていた。ちなみに階段はそのまま天井に突き当たり、どこにも向かっていなかった。
左右を見ると、通路がまっすぐに進んでいるが、廊下の途中に障子が意味もなく立っていたり、明かりを吊るす金具がまるで機能的ではない位置についていたりしている。
立っているだけで気がおかしくなりそうな家だった。
ダリが、ふとしゃがみ込んだ。
「ずいぶん長いこと人が歩いていないようだ。見ろ、草介とやらの足跡がある」
宝生前が荷物からペンライトを取り出す。妖怪であるダリにはよく見えるかもしれないが、私達では、この暗がりで足跡を見分けることは不可能に近い。
「たしかにダリさんの言うとおりです。こちらに続いていますね」
足跡は左手の方に進んでいた。
「なるほど・・・そうですか・・・。だとすると、あの女の言ったことが非常に意味を持ってきますね」
宝生前が自身を襲った女から聞き出した話を教えてくれた。
『本家なんて・・・見たことない!!!みんな圭介様が命令するし、この島の人はみんな浮内の家に世話になってて、逆らえないんです・・・』
薫という女が言ったことだ。
「本家は『存在しない』のかもしれないですね。ここにはホシガリ様だけがいる・・・それなら、綾音さんたちが今しがた見てきた家の様子にも合点がいきます。この家がこれほど複雑に入り組んでいるのは・・・、ホシガリ様を閉じ込め続けるため、かもしれません」
「え?じゃあ・・・草介さんは?」
私はにわかに不安になってきた。この家に人間は一人もおらず、ただ、ホシガリ様という正体不明の神のみがいるとしたら・・・
「早くしないと・・・婿入りの儀というのは、とりも直さず生贄の儀そのものかもしれません」
ひえええ!
私の頭の中には、謎の神、ホシガリ様に頭からバリバリ食べられそうになっている草介さんの図が浮かび、背筋がゾッとしてしまった。
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結局、話した末、この入口を強行突破するのが一番だろうと結論し、ダリに鍵を壊してもらい、私達は中に入り込んだ。
外見からして奇妙なこの家は内もまた、極めて奇妙であった。
裏戸を入り、三和土を上がると、すぐに目の前にふすまがあった。それを開くと、目の前に右上に登る階段が横切っており、左右には廊下が伸びていた。ちなみに階段はそのまま天井に突き当たり、どこにも向かっていなかった。
左右を見ると、通路がまっすぐに進んでいるが、廊下の途中に障子が意味もなく立っていたり、明かりを吊るす金具がまるで機能的ではない位置についていたりしている。
立っているだけで気がおかしくなりそうな家だった。
ダリが、ふとしゃがみ込んだ。
「ずいぶん長いこと人が歩いていないようだ。見ろ、草介とやらの足跡がある」
宝生前が荷物からペンライトを取り出す。妖怪であるダリにはよく見えるかもしれないが、私達では、この暗がりで足跡を見分けることは不可能に近い。
「たしかにダリさんの言うとおりです。こちらに続いていますね」
足跡は左手の方に進んでいた。

