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天狐あやかし秘譚
第25章 毛骨悚然(もうこつしょうぜん)

「息はある・・・。眠っているようだ」
宝生前もしゃがみ込んで、彼の脈を取ったりする。どうやら、問題はないようだ。
良かった。どうやら草介さんは、ホシガリ様への生贄になる前になんとか連れ戻すことが出来そうだ・・・。
やっぱりあれがホシガリ・・・
そこまで考えて私は目を見開いた。
体が震え、すぐに言葉が出ない。
「あ・・・あれ・・・」
私の様子がおかしいことに気づいたのか、宝生前が顔を上げる。そして、やはり私と同じものを目にして、驚愕する。
「だ・・・ダリさん・・・まだです」
そう、ダリが先ほど切ったホシガリ様の傷口がみるみる塞がっていたのだ。流れ、飛び散った血液も、まるでビデオの逆回しのように傷口に戻っていく。
そして、それが顔を上げた。
美しい、女性・・・のように見えたのは一瞬だった。
それは世にも邪悪な歪んだ笑みを浮かべた。
「これでは、妾を殺すには至らぬ」
そのまま大きく口を開き、一足飛びにこちらに向かって襲いかかってきた。
開いた口には人にはありえない長い犬歯が光り、振りかざした手には5センチはあろうかという鋭い鉤爪が生えていた。
人間じゃないことはよく分かった!
「だ・・・ダリ!!!」
恐ろしさのあまり、両の手で顔を覆ってしまう。
「なんじゃ・・・異なことよ」
ダリが再び槍をひと払いした気配がある。そっと手をどけてみてみると、今度は首が切り落とされていた。
だけど・・・!
シュルンと切られた首がもとの胴体に戻ると、あっという間にくっつき再生する。
「ほほう・・・。綾音・・・下がっていろ」
ダリが私とホシガリ様の間に入る。私と宝生前は草介の身体を引きずり、なるたけ壁際に退避した。
「胴を薙いでも、首を切っても滅せぬなら・・・細切じゃ」
ぺろりと舌で唇をひと舐めすると、槍を大きく振り回した。
その姿はまるで舞踊のようにも見える。
閃光のように槍が宙を幾重にも切り裂く。
その光一本一本が斬撃であり、それがかすめるたび、ホシガリ様の身体は引き裂かれた。
「ぎゃああああああ!!!」
ホシガリ様が断末魔の叫びを上げ、文字通り細切れになるのに、刹那ほどの時間もかからなかった。
宝生前もしゃがみ込んで、彼の脈を取ったりする。どうやら、問題はないようだ。
良かった。どうやら草介さんは、ホシガリ様への生贄になる前になんとか連れ戻すことが出来そうだ・・・。
やっぱりあれがホシガリ・・・
そこまで考えて私は目を見開いた。
体が震え、すぐに言葉が出ない。
「あ・・・あれ・・・」
私の様子がおかしいことに気づいたのか、宝生前が顔を上げる。そして、やはり私と同じものを目にして、驚愕する。
「だ・・・ダリさん・・・まだです」
そう、ダリが先ほど切ったホシガリ様の傷口がみるみる塞がっていたのだ。流れ、飛び散った血液も、まるでビデオの逆回しのように傷口に戻っていく。
そして、それが顔を上げた。
美しい、女性・・・のように見えたのは一瞬だった。
それは世にも邪悪な歪んだ笑みを浮かべた。
「これでは、妾を殺すには至らぬ」
そのまま大きく口を開き、一足飛びにこちらに向かって襲いかかってきた。
開いた口には人にはありえない長い犬歯が光り、振りかざした手には5センチはあろうかという鋭い鉤爪が生えていた。
人間じゃないことはよく分かった!
「だ・・・ダリ!!!」
恐ろしさのあまり、両の手で顔を覆ってしまう。
「なんじゃ・・・異なことよ」
ダリが再び槍をひと払いした気配がある。そっと手をどけてみてみると、今度は首が切り落とされていた。
だけど・・・!
シュルンと切られた首がもとの胴体に戻ると、あっという間にくっつき再生する。
「ほほう・・・。綾音・・・下がっていろ」
ダリが私とホシガリ様の間に入る。私と宝生前は草介の身体を引きずり、なるたけ壁際に退避した。
「胴を薙いでも、首を切っても滅せぬなら・・・細切じゃ」
ぺろりと舌で唇をひと舐めすると、槍を大きく振り回した。
その姿はまるで舞踊のようにも見える。
閃光のように槍が宙を幾重にも切り裂く。
その光一本一本が斬撃であり、それがかすめるたび、ホシガリ様の身体は引き裂かれた。
「ぎゃああああああ!!!」
ホシガリ様が断末魔の叫びを上げ、文字通り細切れになるのに、刹那ほどの時間もかからなかった。

