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天狐あやかし秘譚
第26章 往古来今(おうこらいこん)
「清延殿は、今度、都へ行き、侍となると言うていたぞ。あのような若者が跡取りになってくれればなあ・・・」
男性の声・・・?お酒でも飲んでいるのだろうか、随分機嫌が良さそうだ。
「あんたら二人のうち、どっちかがあんな立派な婿をもらってくれれば安泰なんですけどねえ」
こちらは女性だ。どうやら、先程の男の人は父親、こちらの女性は母親のようだった。
「姉様はともかく、私はダメね・・・。」
「あら、海子・・・そんな事わからないわよ。どちらが清延様のお気持ちをいただけるか・・・競い合いましょうよ」
後二人、もう少し年若い娘がいるようだ。
しばらく話を聞いていたが、どうやらこの家には父母、娘二人が住んでいるのみのようだった。

どうしようかな・・・。ここがどこか、聞いてみるか?

でも、あの四人・・・いや、あのホシガリ様は明らかに女性だったので、母と娘二人が候補か・・・が、そのホシガリ様自身である可能性はゼロではない。だとすると、ここで、『ちわっす』とか入っていったら、そのまま餌食なんてことに・・・。

ちょっとブルっと震えが来た。

とにかく、今はダリがいない。
これまでの傾向と対策からいって、こういった異界の中はダリが助けに来にくいことが分かっている。なんとか自力で出る方法を探さないといけない・・・かもしれない。

迂闊なことは出来ない・・・。
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